食べにくい乾パン、避難所での深刻なビタミン不足

2024年の能登半島地震の時には、X(旧Twitter)やInstagramなどで、「備蓄生活」「ローリングストック」といったワードが急増。一般家庭にも災害への備えが広がりつつあることがうかがえる。

そんな中、ワンテーブルが開発・販売する水を必要としない備蓄ゼリー「LIFE STOCK」は、製造から6年間の長期保存を実現した世界初の製品だ。同製品は、2011年3月11日に発生した東日本大震災をきっかけに開発が進められたという。

2011年東日本大震災発生直後の宮城県仙台市若林区 元は田んぼが広がっている土地だったという 
2011年東日本大震災発生直後の宮城県仙台市若林区 元は田んぼが広がっている土地だったという 
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同社取締役の森川氏は、開発の背景について次のように語る。

「弊社は東日本大震災の際、避難所や福祉施設、高齢者施設などで支援活動を行なっていました。その中で、避難されている方々には、赤ちゃんや高齢者、嚥下(えんげ)困難な方も多くいらっしゃることに気づいたんです。しかし、当時の備蓄食の多くは、乾パンやアルファ化米など『水がなければ食べられない』ものばかりでした」(ワンテーブル・森川喜久美さん)

たとえば、歯が丈夫でないと乾パンは食べづらく、水道が断水している状況では食べること自体が困難だ。また、配られた水は飲用だけでなく、歯磨きなどの生活用水としても使用されるため、どうしても足りなくなる状況が生まれる。

さらに、アレルギーの問題で配布された食料を口にできない人がいるなど、子どもや高齢者、要配慮者に対する備蓄が不十分だと感じたそうだ。

また、避難所では炭水化物中心の食事が多く、生野菜が不足しがちで食物繊維の摂取が極端に難しい。配布された食料を食べることができてもビタミン不足に陥ることがあるのだ。

ビタミンが不足すると免疫力が下がり、ただでさえ過酷な避難生活中に風邪をひいたり、健常者にとっても深刻な問題を引き起こす。

「テクノロジーは進化しているのに、日本の備蓄や災害対応はなぜ変わらないのか」

東日本大震災の復興を支援しながら疑問に感じたワンテーブルは、課題を解決すべく行動を起こした。しかし、世界初の備蓄ゼリーとして形になるまでには、さまざまな障壁が待ち構えていた。

東日本大震災の被災地で支援活動を行うワンテーブル 
東日本大震災の被災地で支援活動を行うワンテーブル