Aさんの不倫を連想させる文書は、何度も“切り札”として利用されてきた  

増山氏はReHacQで自白した動機を、音声提供者が岸口氏ではないかとの誤解を解くためだ、との趣旨の説明をしている。しかし立花氏は音声提供者は岸口氏とは別の県議だと説明してきており、そもそも岸口氏に疑いの目は向いていなかった。

このため増山氏の狙いは、AさんやAさんによる告発は信用できないともう一度強調するためではないかと地元メディア関係者は指摘する。

「百条委で制止を聞かずに話そうとした片山氏と増山氏が最も前のめりになったのは、Aさんのパソコンに不倫を連想させる文書があったと知らしめることだったと思います。

ただこの文書は告発内容に関係がなく、書かれていることが本人のことなのか創作なのか区別がつかず真偽不明とされているものです。このため、選挙後に公開された10月25日の片山氏の尋問時の映像でも、これに触れた部分の音声は消されています」

実はこの文書は、斎藤氏側近の県幹部や維新が反撃の“切り札”として何度も利用してきた経緯がある。

「Aさんの告発直後の昨年3月25日、片山副知事が取り上げたパソコンから見つけたこの文書を印刷したものを、斎藤氏の最側近だった井ノ本知明総務部長(当時)が複数の県議や県職員に見せ、『こんなのを書く人間が言うこと(告発)なんか信じられへんでしょ~』と言って回っていました。Aさんは信用できないと印象づけ、百条委の設置を阻止しようとしたんだと思います」(県OB)

片山副知事は「自分が辞職するので百条委設置はやめてくれ」と県議会に懇願したが、結局失敗。すると片山氏は突然副知事を辞職する。

2月18日、兵庫県議会本会議の冒頭、故竹内英明元県議に黙祷する同僚県議ら(撮影/集英社オンライン)
2月18日、兵庫県議会本会議の冒頭、故竹内英明元県議に黙祷する同僚県議ら(撮影/集英社オンライン)

「ところが今度は百条委で、増山氏と岸口氏がこの文書も開示して調べよと執拗に要求したんです。これをAさんは気に病んでいました。結局昨年7月、百条委は告発内容に関係がないとして調べないことを決めました。しかしその前日にAさんは『一死をもって抗議をする』との言葉を遺し自死しました」(県職員)

文書を見せて回った井ノ本氏の上司だった片山氏。片山氏が設置阻止に失敗した百条委で公開を求めた増山氏と岸口氏。これら同じ登場人物が選挙に向けて放ったのが、またもAさんの文書だったというわけだ。

「知事選で斎藤陣営のSNS広報を行なったPR会社の関係先が公職選挙法違反容疑で家宅捜索を受けるなど、斎藤氏は最近また追い込まれています。増山氏が自白に打って出たのは、もう一度Aさんの文書に注目を集め、斎藤批判の声を封じようとする意図があるのではないでしょうか」(地元メディア関係者)

斎藤氏をめぐる問題は、昨年3月の勃発から、解決に向け一歩も進んでいない。

2月18日、兵庫県議会本会議の議場へ向かう斎藤元彦知事(撮影/集英社オンライン)
2月18日、兵庫県議会本会議の議場へ向かう斎藤元彦知事(撮影/集英社オンライン)
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班