11月から昨年末にかけて連日続いた「電凸」

「お前も死んでしまえ。ボケ、あほ」

「おらんようなるのがみんなの幸せや。もうどっか行った方がええな。地獄はいけるやろうな」

「お前、無責任すぎるやろ! そんな人間、死ねや。オゥゥ!」

無所属の兵庫県議・丸尾牧さんの事務所の留守電には、ドスを利かせた罵詈雑言の声が残されていた。昨年夏に始まった電凸(電話突撃)は出直し知事選があった11月から昨年末にかけて連日30件ほど続いたという。

「もう聞きたくないのでずっと留守電状態にして、音も消しているんです。警察に届けてかなり消したので、残っている音声はわずかです」と丸尾県議は疲れた表情で話す。

1月26日、事務所で被害を話す丸尾県議(撮影/集英社オンライン)
1月26日、事務所で被害を話す丸尾県議(撮影/集英社オンライン)
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丸尾氏が狙われたのは兵庫県政をめぐる疑惑解明の先頭に立ったためだ。一連の問題は昨年3月、当時の西播磨県民局長・Aさん(60)が知事の疑惑を書いた匿名の告発文書を外部に送ったことで始まった。

斎藤知事の指示による、公益通報者保護法違反の疑いがある「告発者探し」でAさんは発信者と特定され、懲戒処分を受けた。斎藤知事はAさんを「嘘八百」「公務員失格」と記者会見で非難し、疑惑を抑え込んだかに見えた。

「しかし告発文書に登場する県産業労働部長が企業からコーヒーメーカーを受け取っていたことを読売新聞が昨年4月にスクープしました。さらに、丸尾県議が独自のアンケートを県庁前で県職員300人に配り、これに回答した延べ13人が、知事や側近のパワハラや物品受領に関する情報を寄せたのです。

この二つによって告発文書には信ぴょう性があるとの見方が広がり、(疑惑を調査する)百条委が設置されました。知事側は、片山安孝副知事(昨年7月に辞職)が議会側に、『自分が辞職する代わりに百条委設置はやめてくれ』と言って設置阻止を働きかけましたが失敗しました」(地元記者)

Aさんは百条委での証言前の昨年7月に急死。それでも百条委の調査には告発を裏付ける証言が多く寄せられた。

だが県議会は斎藤知事が告発を適切に扱わず県政を混乱させたという別の理由で、百条委調査が終わっていない9月に不信任決議を採択。これを受け失職を選んだ斎藤知事は、11月の出直し知事選に出馬、当選し、返り咲いた。

「この選挙で『疑惑は全部ウソで斎藤知事はハメられた』という事実と異なることがSNSで広められました。丸尾県議と、独自に調べた情報を次々と明らかにした竹内英明県議、そして百条委委員長の奥谷謙一県議の3人を筆頭に、疑惑調査に関わる人を非難する声が強まったのです。疑惑には根拠があるのにもかかわず、丸尾さんと竹内さんはその根拠をでっち上げた、として特に攻撃されたんです」(県議会関係者)

2024年8月30日、兵庫県議会百条委で斎藤元彦知事を尋問する竹内英明県議(撮影/集英社オンライン)
2024年8月30日、兵庫県議会百条委で斎藤元彦知事を尋問する竹内英明県議(撮影/集英社オンライン)

電話やメールによる攻撃はSNSを見た人物らが行なったとみられている。