どう地域の暮らしを守るのか、破綻する前に議論してほしい 

――大きな問題を前に、宮崎さんがこれからの郵政グループに期待することは?

民営化を進めた小泉純一郎元首相が現状をどう見ているのかお聞きしたいと考え、数年前に取材を申し込んだことがありますが、断られてしまいました。

確かなことは、郵便物は減り続けており、過疎化が進む地方では郵便局の利用者も減少するということ。今の無理な収益構造を変えなければ、また別の形で問題が噴出し、いつかは破綻してしまうのではないでしょうか。

一方で、郵便局がなければ生活が困難になる地域があるかもしれません。そこではどのようなサービスが求められているのか、そのサービスをビジネスとして維持できるのか、無理な場合には国がやるべきなのか。

簡単に結論をだせる問題ではないと思いますが、地域の生活インフラを守るためにも、郵政グループだけでなく国会にも、議論の入口に立ってほしいと願っています。

始終、冷静に説明してくれた
始終、冷静に説明してくれた
すべての画像を見る

取材・文/宿無の翁 写真/わけとく 

〈プロフィール〉
宮崎拓朗(みやざき たくろう)

1980年生まれ。福岡県出身。京都大学総合人間学部卒業後、2005年に西日本新聞社に入社し、長崎総局、社会部、東京支社報道部を経て、社会部遊軍に配属された2018年より日本郵政グループを取材し、「かんぽ生命不正販売問題を巡るキャンペーン報道」で第20回早稲田ジャーナリズム大賞、第3回ジャーナリズムXアワードのZ賞、「全国郵便局長会による会社経費政治流用のスクープと関連報道」で第3回調査報道大賞優秀賞を受賞。現在、西日本新聞社北九州本社編集部デスク。

 

ブラック郵便局
宮崎拓朗
ブラック郵便局
2025年2月17日
1760円(税込)
240ページ
ISBN: 978-4103561514
関係者1000人以上の「叫び」を基に歪んだ巨大組織の実態に迫る驚愕ルポ 街中を駆け回る配達員、高齢者の話に耳を傾け寄り添うかんぽの営業マン……。市民のために働いてきた局員とその家族が、疲弊しきっている。異常すぎるノルマ、手段を選ばない保険勧誘、部下を追い詰める幹部たち。そして、既得権保持を狙う政治との癒着――。窓口の向こう側に広がる絶望に光を当てる執念の調査報道。
amazon