甲斐はなぜ巨人入り?

「一度きりの権利だと思ってますし、いろんな話を聞いてみたい」

1か月前、FA宣言した直後の甲斐は神妙な面持ちでこう答えた。

甲斐といえば、2010年に育成ドラフト6位で入団し、2017年〜2022年まで6年連続でゴールデングラブ賞を受賞、同期入団の千賀滉大(ニューヨーク・メッツ)とともに育成選手史上初の五輪代表選手に選出された。昨年のWBCでも侍ジャパンの主力として活躍するなど、ソフトバンクのみならず球界を代表する捕手だ。

そんな球界ナンバーワン捕手の“電撃移籍”に驚きの声があがっている。

「甲斐の出身は大分県大分市で、高校も地元の楊志館高校。地元・九州の人気球団の正捕手としてプレーすることを甲斐自身がいちばん喜びに感じていました。今の巨人はレギュラー争いも激しく、正捕手にこだわる甲斐は残留すると思っていたんですが…」(球界関係者)

FA移籍で巨人入りした甲斐拓也 写真/共同通信社
FA移籍で巨人入りした甲斐拓也 写真/共同通信社
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今季の巨人の捕手事情は、侍ジャパン経験もある大城卓三(96試合)、小林誠司(42試合)と岸田行倫(88試合)といった実力者によるハイレベルな正捕手争いが繰り広げられた。それでも、巨人は甲斐に対してソフトバンクを上回る5年総額15億円以上の条件を提示したと言われている。

「甲斐の今季の年俸は2億1000万円(金額は推定)。ソフトバンクは4年総額10億円超を提示して引き留めにかかりました。しかし、巨人はさらにそれを上回る好条件を提示したと言われていますが、カネの問題で甲斐が移籍したとは考えられないですね。球団の経営や捕手としての評価に疑問を感じていたんだと思います。

ましてや、移籍先の巨人監督は甲斐と同じく捕手出身の阿部慎之助です。阿部監督が自身の現役時代の背番号「10」を提示して熱心に口説いたとしたら、捕手として高みをめざす甲斐が巨人入りを決意したのも頷けます」(前同)

今回の移籍には、かつて球界を代表する名捕手だった阿部監督の影響も少なくないが、それ以上にソフトバンク球団の経営戦略に疑問を感じていたのではないかという声もあがっている。