甲斐の代役即戦力を補強しなかった理由

今オフFAの目玉として巨人に移籍した甲斐の人的補償は、大卒社会人5年目の伊藤優輔だった。

球界を代表する捕手、甲斐の移籍で手薄となったソフトバンクの捕手陣だが、フロントは巨人から人的補償で捕手を補強するという特効策はとらずに投手陣の補強を選択をした。

今月、ソフトバンクの仕事始めとなった鏡開きでの会見で城島健司CBOは、甲斐の功績を称えながらも、現状の捕手陣への期待も口にしていた。

「いきなり甲斐が抜けたわけではない。ポテンシャルの高い捕手がいる。その中の誰がポジションをとるのか。代わってやってくれるだけの人材はいると思う」

新戦力が台頭するチャンスというポジティブな面を強調したが、甲斐の抜けた穴はそう簡単に埋まるはずがない。

昨季の甲斐は119試合出場で打率.256。球界ナンバーワンと呼ばれる強肩や長年常勝軍団を支えてきたリードなど、数値化できない守備面での貢献度は高く、それだけにソフトバンクにとって戦力ダウンは免れない。

「甲斐の代役候補筆頭は、今季6年目となる27歳の海野隆司です。とはいえ、昨季51試合出場で打率.173。これがキャリアハイの数字なんです。まだシーズンを通して出場した経験すらない若手に甲斐の代役を求めるのは酷でしょう。

そこで必要になるのがベテランの存在ですが、DeNAからFAで移籍してきた33歳の嶺井博希は昨季たった4試合の出場です。今季は同じDeNAから現役ドラフトで上茶谷大河、トレードで濵口遥大というかつてのドラフト1位投手たちが移籍してきます。2人をよく知る嶺井にとっては追い風になると思いますが、それでも正捕手として甲斐の穴を埋める存在になるとは思えません」(パリーグ球団スカウト)

昨季のソフトバンクの主な捕手の成績
昨季のソフトバンクの主な捕手の成績
すべての画像を見る

現有戦力だけで扇の要の穴を埋めるには心許ないソフトバンクが、捕手王国の巨人から人的補償で甲斐の代わりとなる選手を補強しなかったのは何か秘策があるのだろうか。