積極補強の裏で自軍の生え抜き選手には…
「ソフトバンクは親会社が携帯電話のキャリア会社なんですが、携帯電話って他のキャリアからのりかえて新規契約するユーザーとは料金設定など高待遇で契約するんです。だけど、長年契約しているユーザーに対してはあまりサービスや待遇がよくないんですよ。
だからってわけではないと思いますが、他球団から来た選手には手厚く、生え抜き選手には辛い球団になってしまってますね」(パリーグ球団スカウト)
実際、ソフトバンクはFA補強に対して金に糸目をつけない傾向がある。2021年又吉克樹、2022年近藤健介、嶺井博希、2023年山川穂高と、毎年いずれも破格の条件でFA選手を補強。さらに2022年オフにはMLB帰りの有原航平、今年も同じルートで上沢直之を獲得している。
一方で、自軍の生え抜き選手との契約には渋いところがある。多くの選手をFAで獲得しているが、意外にも資金力豊富なはずのソフトバンクから流出する選手は多い。今年も甲斐だけでなく、すでに石川柊太がロッテにFA移籍している。
さらに、12球団で唯一4軍制を敷くソフトバンクは、毎年育成枠で大量の選手を獲得して大量の戦力外通告を行なっている。球界で最も競争の激しい真のプロ球団という見方もできるが、こうした方針に疑問を持つ見方も少なくない。
「今年は、ウエスタンで最優秀防御率の三浦瑞樹(中日入り)、2軍で4割の打率を残したスイッチヒッターの仲田慶介(西武入り)、2軍で24試合登板して防御率2.82の左腕・笠谷俊介(DeNA入り)も戦力外になりました。にもかかわらず、ドラフトでは支配下で6人、育成で13人獲得しています。
この競争こそが常勝ソフトバンクの強みでもあるのですが、もう少し生え抜き選手に対して手厚く、長い目で育成に力を入れてもいいのでは……とも思います」(前同)
かつてソフトバンクに所属した千賀は、海外FA権を行使してメジャー移籍する際に「ホークス批判とかじゃない」としていたが、ポスティングシステムをめぐる球団の対応についてSNSで発信したところ物議をかもしたことがある。
千賀と同じく育成ドラフトから這い上がり、球界を代表する選手となった甲斐もソフトバンクを去る。
「今の自分があるのは、間違いなく、 ホークスに育てていただいたおかげ」
14年間、苦楽をともにした球団から離れることを決断した甲斐は熱いコメントを残したが、その胸中には複雑な思いがあるだろう。
取材・文/集英社オンライン編集部