どれだけ体調が悪くても、コンサートを飛ばしたことは一度もない
作・編曲家、音楽プロデューサーの武部聡志が、これまで共演してきた歌い手たちの魅力を論じた『ユーミンの歌声はなぜ心を揺さぶるのか 語り継ぎたい最高の歌い手たち』が集英社新書より刊行された。
刊行から2週間で2度の重版がかかるなど、すでに大きな話題になっている。
そのタイトルに冠され、武部が最も思い入れ深く論じているのが、ユーミンこと松任谷由実だ。1983年より武部がコンサートツアーの音楽監督を務めているなど、2人の親交は40年を超える。
武部は、本書の中でユーミンの歌い手として魅力の1つに「ライブに対するストイックな姿勢」を挙げている。その一節を紹介しよう。
「ユーミンの魅力について、ライブパフォーマンスの話をしたいと思います。
50年以上のキャリアを振りかえって、アルバムをリリースしない年はあっても、ライブを行わなかった年はありません。それだけユーミンは自分の活動のなかでライブに重きを置いてきたんです。
どれだけ体調が悪くても、コンサートを飛ばしたことは一度もありません。本編で足をくじいて、どんなに激痛があったとしても、アンコールは必ず行ってきました。
彼女のショービズに対する心構え、その気迫にはすさまじいものがあります。観客にちゃんと納得して帰ってもらう。そのためにはステージで全力投球する。決して手を抜かない。
これだけ長いあいだ一緒にやってきても、それはいまだに変わらない姿勢です。
歌う前日には1滴もお酒を飲まず、だれよりも早く会場に入って、決められたウォーミングアップのメニューをこなす。そういう徹底した自己管理をユーミンは怠りません。
ストイックという言葉は彼女のためにあるんじゃないか。そう思うほど、ユーミンはストイックです。
それが50年以上も歌いつづけてこられた、彼女のひとつの要因でもあると思います」