ついに実現した、当初思い描いていたキャリア
――宣言から約2年が経ちましたが、宣言してよかったと思いますか?
よかったと思います。僕にとっても、担当編集さんや業界にとっても楽というか。さすがに「イラスト仕事は振らないようにしよう」って思うじゃないですか(笑)。
――そうですね(笑)。
そして、お話だけに専念できるのは非常に楽ですね。絵を描くのって、実は常にアップデートが必要なんですよね。勉強はもちろん、機材も新しくしないといけない。
その中で一番怖いのは、世の中が新しい絵柄の方向に変わっていったり、うまい人がどんどん増えていくことなんです。それに合わせていくのは大きな心労だし、絶対的なコストが多いんです。
――原作者としてもアップデートは必要かと思いますが、赤坂先生は作画よりもそっちのほうが自然と更新していけると考えたわけですね。
そうですね。僕にとってはそっちのほうが楽しくできるし、そうしていたい。僕は「ずっと絵を描き続けても、だんだんアプデしなくなるだろうな」と思っちゃう部分があったので、それなら「絵を100%頑張ってます!」って人と組みたいと思ったんです。
もちろん、絵がうまいだけじゃなく、漫画もうまい人じゃないと、漫画の作画をお願いすることはできないんですけどね。
――ちなみに赤坂先生は当初から原作者志望で、『かぐや様』についても渋々自分で絵を描き始めたとか。
正味な話、「僕には漫画はできないだろう」と思っていたんです。でも、原作者になるには漫画家としてのステップを踏んでおかないといけない。だって、実績も何もない人が「僕は原作者です。すごく絵がうまい人を充ててださい」って言っても、たぶん無理じゃないですか。
――確かにそうですね。
で、何本か連載してみて実績をちょっとは積んだので、「今度こそ」と思って集英社に来て「原作者やらせてください」と言ったら、できなかった。それが『かぐや様』の始まりでした。
――それが大ヒットしたんだからすごい話ですが、やっぱりそこで『かぐや様』を当てたことで原作者になれたわけですよね。
そうです。『かぐや様』がなかったら『【推しの子】』はこうなっていなかっただろうなと思ってます。だから『かぐや様』を自分で描いたことには後悔は何もないし、担当編集さんへの恨みとかもないです(笑)。
やれてよかったなって思っているので。「できるかな……?」って不安が大きかったので、それができたことは僕の中でもすごく大きな経験です。