『【推しの子】』に不可欠だった、SNSという要素

――『【推しの子】』で印象に残っている点の1つが、作中でSNSの炎上について何度も描かれてきたことです。
 

赤坂アカ(以下同) 『【推しの子】』を描くにあたって、「令和の『芸能界もの』にしよう」という意識があったので、その影響が大きいと思います。というのも、過去の漫画作品でも「芸能界もの」はいくつかあるので、差別化のためにも今っぽいものをあえて取り入れる方向で話を回していったんです。

あとは僕自身の実感も関係していると思います。というのも、漫画家もファンの方と直接お話しする機会はサイン会とかイベントくらいしかないんですよね。そうなると、ファンのイメージが「SNSの中の人たち」に寄っていくんですよ。

そして、それはSNSを運用する現代のアイドルも同じはず。他にもYouTuberなども含む、多くの令和の活動者にとって、「ファン=SNSの中にいるもの」に見えているんじゃないかと考え、SNSについては深めに描かせていただきました。

――『【推しの子】』は原作者宣言をしてから最初の作品となりましたが、メンゴ先生と一緒だからできたことを教えてください。

若年層にヒットしたのは、間違いなくメンゴ先生のおかげだと思っています。メンゴ先生の絵は僕ひとりじゃ絶対できないことの最たるものだと思っています。だから『【推しの子】』は「誰かと作品を作りたい」という想いが叶った、本当に人とやる意味があった作品だと感じています。

赤坂先生も絶賛するメンゴ先生の絵 ©︎赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社
赤坂先生も絶賛するメンゴ先生の絵 ©︎赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社

――ネームと作画を別の人が作るという仕事の進め方は、実際にやってみていかがでしたか? 

僕とメンゴ先生は趣味は似てるけど同一人物ではないので、やっぱりシンクロしない部分もあるんですよね。でも、そこが味になるようにネームを描いているつもりなので、僕としては非常にやりやすかったです。

そして、いろいろ勉強させてもらったところも多いと思っています。例えば、細かい演出のかけ方や、漫画の空気感やテンポ感の出し方。そこそこ作品を描いてきた漫画家の技術や手札ってある程度似たようものになってきて、いつどのカードをどう切るかが作家性になってくると思うんですよ。

その点、メンゴ先生とやっていると「あっ、このときにこの手札を切るのか!」と驚かされることが多くて、そこは影響を受けました。

――最終回を迎えて全話が揃った今、『【推しの子】』は最終的にどんな作品になったと感じていますか?

まさにそれは僕自身が最近考えていることでした。「『【推しの子】』って何だったんだろう?」って。