ハリスもイスラエル政府を正面から批判できない
夕刻からNY在住のジャーナリストのYさんに時間をとっていただき、ユニオン・スクエアで待ち合わせて、最終盤の情勢を聴く。Yさんの現場取材優先主義は徹底していて、きのうはペンシルベニアの小さな町での集会、今日はつかの間のNY、あしたはワシントンDCへと移動するという。
Yさんの分析では、ヒラリー・クリントンの時と最も違うのは、ひとつは若さだという。と言ってもカマラ・ハリスは今60歳だ。ヒラリーが出馬した時は70歳だった。若い世代の思いが政治に反映されないという選択肢に皆うんざりしていた。
2016年の時だ。当時はバーニー・サンダースの方に若い世代がひかれていたことははっきりと記憶している。2020年の大統領選挙の取材も現地でしたけれど、当時は、白人警官による黒人への過剰な暴力で死に至ったジョージ・フロイド事件などをきっかけに「ブラック・ライブズ・マター」の運動が大変な盛り上がりをみせ、これが全米的なデモ・暴動へと発展していた。
バイデンVSトランプで争われたあの年の大統領選では、人種差別問題が大きな争点の一つになっていた。今、移民問題が争点の柱に据えられるとは何という様変わりだろうか。
2020年の大統領選挙では、だから若い世代の意見が投票行動に一定程度反映されていたように思う。その意味では今回のバイデン大統領の出馬取り下げが若者の政治参加にどれだけの勢いを与えたか。僕にはわからない。
Yさんの現場取材の直感では、若い女性は圧倒的にカマラ支持へと勢いづいたが、逆に若い男性層はトランプ支持が増えているという。Yさんの考えでは、ガザでの戦争も含めて、今イスラエル政府の行なっている軍事行動に正面から批判的なスタンスをカマラ・ハリスが示すことはないという。
それくらいユダヤ人社会の政治的影響力は圧倒的に大きい。
ニューヨークで2日に行われたガザ虐殺抗議の市民デモ(それほどの大人数ではない)には、「Abandon Harris 2024」(ハリスを見捨てろ)というプラカードが登場していたそうだ。残念ながらどちらが大統領になってもガザの戦争の見通しは明るくない。
さあ、結果はどうなる。
文/金平茂紀