激戦7州の「約200 万票」が全米の今後を決める

垂直方向、水平方向の違いはあれ、トランプ、ハリス両陣営とも相手の支持基盤に手を突っ込んで票の掘り起こしに注力してきた。

選挙最終盤になってトランプ氏が民主党の牙城であるニューヨークで、そしてハリス氏がトランプ陣営の大票田であるテキサスで、大規模な政治集会を開いたのがその典型です。

「トランプ氏は応援弁士に筋肉ムキムキの元プロレスラー、ハルク・ホーガンを招き、『不法移民2000万人をアメリカから追い出す』などとマッチョな演説をマジソンスクエアガーデンでぶち上げ、これまで掘り起こせなかったリベラル男性層にアピールをしました。

一方のハリス氏は人気女性歌手のビヨンセとともに赤い州(共和党)の大票田であるヒューストンの演説会場に現れ、人口妊娠中絶の重要性を強調してみせた。こちらは明らかに保守的な女性有権者がいる右軸にウィングを伸ばそうという動きとえいます」

ハリス氏
ハリス氏

米大統領選は各州の勝者がその州の選挙人を総取りするというルール。だから、トランプ氏にしろハリス氏にしろ、相手陣営の勝利がほぼ確実なニューヨークやテキサスで今さら集会をやったところで勝てる見込みは薄く、選挙人の上積みなど期待できないはず。それだけに、これにはどういった狙いがあるのか?

「両陣営があえて莫大な資金と労力をかけて敵地で大集会を開いたのは、自分が敵地でもこれだけ大きな支持を得ているということを全米の有権者に誇示することによって、激戦7州をはじめとする他州の投票先未定者に一票を投じてもらおうとしているのです。

しかも、この票の掘り起こしはまさにマイクロターゲットをピンポイントで狙うミクロな戦いとなっています。人口3.6億人のアメリカですが、有権者登録数は1.7億人ほど。投票率が60 %前後として、米大統領選はだいたい1億票前後をめぐる争いとなる。

ただし、これだけ僅差の戦いとなっているため、焦点は激戦7州の態度未決定票約200 万票の動向に移っている。1億票の200万票だから全体のわずか2%。このマイクロな票数の動きによって激戦7州の勝敗が決まり、全米での勝敗が確定するという状況になっているのです」

はたして勝利の女神がほほ笑むのは? アメリカ大統領選は5日朝(日本時間同日夜)、東部各州から投票が始まる。

(#2に続く)

取材/集英社オンライン編集部ニュース班