「本当に盗作したんですか?」と質問される原作者
記録的猛暑が続く7月某日、ドラマ『クラスメイトの女子、全員好きでした』の撮影現場に足を運ばせていただきました。突然の訪問にも関わらずあたたかく出迎えていただいた出演者の方々、スタッフ、関係者の皆様に心より感謝いたします。
私が訪れた日は、物語も佳境に入った第8話の撮影中。〝中学時代のクラスメイトの誰かが書いた小説を盗作した〟という事実を公表し、作家としても人としても居場所を失った木村昴さん演じる枝松脛男(えだまつ・すねお)が向かった先、それは自分のふるさとだった……という怒涛の展開です。
ドラマが始まってからというもの「本当に盗作したんですか?」とか「女の子におカネをだまし取られたのはガチですよね?」と質問される機会が増えました。そんな風に思われてしまう自らの日頃の行いを猛省しております。
ドラマの撮影現場って、もっと殺伐としたものを想像していたのですが、終始なごやかなムードに包まれた非常にあたたかい現場でした。それでいて撮影がスタートすると一瞬でピシッと引き締まった空気が流れる。良い作品を作る上で、この緊張と緩和のメリハリが大切なんだろうなと感心いたしました。
あまりの居心地の良さに緊張が徐々にほぐれてきた私は、撮影スタッフの中にド派手なメタルTシャツを着ている女性を見つけ「うわ、すげえ話がしてえ!」と胸をドキドキさせておりました。すぐに誰かを好きになってしまうクセは、いくつになってもどこにいても変わりません。
人生で一度は口にしたい素敵な言葉、「カメオ出演」しちゃいました
さて、実はこの日は撮影見学だけではなく、ある大仕事が待っておりました。スタッフの皆様のご厚意により、私、第8話にカメオ出演することになったのです。カメオ出演、人生で一度は口にしたい素敵な言葉ですね。ミーハーの田舎者の出たがり作家が!と罵られても全然平気。この作品が一人でも多くの人に届くお手伝いができるなら私は何だってやります。もし失敗しても、そのときのコメントも事前に準備してあるのです。
「出す方が悪い」
皆川猿時さん演じる主人公の父親、枝松富士夫は体調を崩して入院することに。日銭を稼ぐため病院内でもせっせと内職に精を出す富士夫。そんな彼に無理やり仕事を手伝わされる入院患者。それが私に与えられた役柄でした。
患者衣に袖を通した私はベッドの上にあぐらをかき、ボールペン作りに勤しむ。子供の頃に実際にやっていた内職をたくさんの人の前で披露する日が来ようとは。生きてりゃ面白い事もあるもんだなぁとしみじみ。
そして私の隣には憧れの皆川猿時さんの姿が。大人計画の舞台やグループ魂でのご活躍などを拝見し、皆川さんの大ファンである私は、自分の〝推し〟に親父を演じていただけることが小っ恥ずかしくもあり最高の幸せでありました。
台本にはない言葉や動作を次々に繰り出す演者の皆様、少しでも良いものを録るためにいっさい妥協を許さないスタッフの皆様の真剣勝負を、カメラ越しではなく出演者の方々と同じ目線で目撃できたことは何物にも代えがたい一生の財産です。
「こんなに楽しくてやりがいのある現場はめったにないし、こんなにアドリブが採用される現場もめったにないです」
出演者、監督、スタッフの皆様が口を揃えてそう言ってくださるのが何より嬉しかった。「原作や台本に忠実であるより現場で面白いと感じたものを作品にして欲しい」。映像化が決まった際に、私からひとつだけお願いしたことはちゃんと守られていました。それが嬉しかった。