行きすぎた消費社会に警鐘を鳴らした無印良品
無印良品はなぜこれほどまでに強いブランド力を維持できているのだろうか。その理由は大きく3つあると考えられる。
1つ目は良品計画が誕生した背景と、持続可能な社会という現代の概念が合致したこと。2つ目はターゲット層が値上げ耐性に強いこと。3つ目は商品開発力に強みを持った会社であることだ。
良品計画は西友のプライベートブランドを開発する会社として1980年にスタートしている。当時、西友を擁するセゾングループのトップといえば、実業家の堤清二氏だ。堤氏はバブル期の消費動向をとらえ、西武百貨店や西友を業界トップレベルにまで引き上げた立役者だった。実業家として華々しく活躍する一方、小説を発表するなど文学にも造詣が深く、教養があった人物としても知られている。
バブル期はDCブランドブーム真っ只中。数々の高級ファッションブランドのアイテムが飛ぶように売れていた。そんななか、シンプルかつ機能性の高い商品を取りそろえる無印良品は、ブランドの名を冠すれば高額でも売れるという時代のアンチテーゼとして誕生したのだ。
堤氏は一時、日本共産党に入党していたことでも知られている。
行きすぎた消費社会に反旗を翻しつつ、それを資本主義というシステムの中で表現したことは、何とも堤氏らしいやり方だ。
そして2000年代に入り、大量消費・大量廃棄型の経済が疑問視されるようになった。多くの人がそれを認識するようになったのは、2015年9月に国連総会で採択された「持続可能な開発のための17の国際目標」だろう。いわゆるSDGsである。
良品計画の売上高が2000億円を突破し、急成長し始めたのが2014年2月期からだ。消費者がサステナブル社会を意識するようになったタイミングとちょうど重なっている。
良品計画は中国やヨーロッパなどの海外でも高い支持を得ている。国際的な消費者意識の変化の中で、急速に力をつけたのだ。
また、サステナブル・ブランド ジャパン アカデミックチームが消費者を対象にした調査で、サステナブルなブランドとして1位を獲得している。得点は僅差でトヨタ自動車を上回った。持続可能な社会における代表的なブランドとなったのである。