小規模調剤薬局の脅威となるオンライン販売

展開するサービスは「Amazonファーマシー」だ。利用者のアマゾンアカウントから、登録されている薬局で薬剤師がオンライン服薬指導を行う。

その後、処方薬を自宅や所定の住所に配送するというもの。利用者は医療機関で取得した電子処方箋の内容をアップロードし、薬局を選択する。

都内にあるウエルシア薬局 
都内にあるウエルシア薬局 
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新型コロナウイルス感染拡大以降、薬局は電子化に向けて大きく変化していた。オンライン調剤はドラッグストア業界に大変革を起こす起爆剤になると見られていたが、ついに現実のものとなった。

利用者は自宅にいながら必要な薬が手に入るため、薬局への行き来の時間や待ち時間を削減できる。電子カルテ等でリアルタイムの処方・調剤情報の閲覧が可能になり、同じ薬の重複処方などを防ぎやすくなると見られているなど、各方面へのメリットは大きい。

しかし、個人経営の薬局や病院の前にある門前薬局にとっては脅威になる可能性がある。実は薬局の調剤基本料はタイプによって異なるのだ。個人経営の薬局は45点、門前薬局が29点だ。ドラッグストアチェーンは処方箋受付回数などによって点数が異なるが、19点・24点・35点など、それぞれ設定されている。

1点は10円として計算されるため、同じ薬であっても個人経営の薬局は調剤基本料が450円、ドラッグストアは安いところで190円。高くても350円だ。これは医療格差が生じないよう配慮したもの。

人口の多い都心部に住む薬局だけが稼げるようになることを防ぎ、集落などに暮らす人々の健康を保つため、かかりつけ薬局の収益性を確保しようという狙いがある。

こうしてオンラインによる処方薬の販売が普及すると、調剤基本料金の設定によって守られていた個人経営の薬局や門前薬局は価格面で不利になるのだ。

調剤薬局の淘汰はすでに進んでいる。東京商工リサーチによると、2022年度の薬局の倒産件数は15件(「2022年度(4-3月)の「調剤薬局の倒産動向」調査」)。2021年の23件と比べると減少しているものの、依然として高水準で推移している。大手薬局との競争激化で販売不振が深刻化する一方だ。

仮に小規模事業者がアマゾンと提携してオンライン販売に参入したとしても、今の枠組みでは利便性と天秤にかけても価格面で不利な状況に変化はない。ウエルシアのような大手にとっては、またとないチャンスなのである。