未開拓ライダーの獲得を狙ってマーケティング戦略を重視
ハーレーダビッドソンは2020年5月にヨッヘン・ツァイツ氏をCEOに迎えた。ツァイツ氏は30歳にしてドイツのスポーツブランド、プーマのCEOに任命されたやり手のビジネスマンだ。トップ就任後は財政難に陥っていたプーマを再編。8.6ユーロだった株価は最高350ユーロに達したことで知られている。
ツァイツ氏が就任する前のCEO・マシュー・レヴァティッチ氏は機械工学や経営を学んだ後にハーレーダビッドソンに入社し、2009年から2015年まで経営トップを務めた人物だった。
ツァイツ氏のバックボーンはマーケティング。会社のトップが理系出身からマーケティングの専門家へと移ったことが、ハーレーダビッドソンという会社の転換点をよく物語っている。
ハーレーは2020年2Q(4-6月)に1億1600万ドルの営業損失に転落。コロナ禍で営業活動が制限されたことで、10年ぶりの赤字となった。ただし、その前から業績は低迷していた。
レヴァティッチ氏は中国メーカーと提携して初のOEM(「Original Equipment Manufacturing(Manufacturer)=他社ブランドの製品を製造すること、あるいはその企業を指す)に取り組むなど、価格を引き下げて販売数の拡大を狙っていたが、結果として販売台数は振るわなかった。
ツァイツ氏が率いるハーレーダビッドソンは、2021年2月に5か年計画「ハードワイヤー」を発表。未開拓のライダーを取り込んで顧客の裾野を広げることを重点施策の一つに掲げた。
その結果として誕生したのが、アドベンチャーバイク「パン・アメリカ」や、水冷Vツインエンジンを搭載した「スポーツスターS」だ。