過去最高レベルの賃金引上げに不満の声があがる理由

厚生労働省は、今年度の地域別最低賃金額改定の目安についてABCの3ランクに分けている都道府県すべてで、50円引き上げとした。

目安どおりに各都道府県で引上げが行われた場合の全国加重平均は1054円。昨年度は43円の上昇であったがこれを上回り、1978(昭和53)年度に目安制度が始まって以降、最高額となる予定だ。

これを受けて岸田文雄首相は「過去最大の上げ幅となった今回の最低賃金の力強い引き上げ、これを歓迎したいと思います」と述べている。

岸田首相は昨年9月にも、全国平均の最低賃金が1000円を超えた際に、「2030年代半ばまでに、全国加重平均が1500円になることを目指す」とコメントを発表しており、毎年の賃上げについて意欲をみせていた。これは、昨今の急激な物価高を上回るほどの賃上げが狙いとなるが、肝心の国民からはそれほど色よい声はあがっていない。

まず、全国的に最低賃金ギリギリの時給で求人を出していることが多い、コンビニエンスストア。今回の50円アップのあおりをモロに受けてしまうと思われるが、オーナーはどう考えているだろうか。都内の駅近でコンビニを経営する、50代・男性に話を聞いた。

都内コンビニの求人 *記事に出てくる人物とは関係ありません(撮影/集英社オンライン編集部、以下同)
都内コンビニの求人 *記事に出てくる人物とは関係ありません(撮影/集英社オンライン編集部、以下同)
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 「もちろん賃金アップの分、経費が上がることは事実で、苦しい部分はあります。ただ、賃金アップはもう世の中の流れとして当然と考えていますし、物価高騰の影響もあってウチの売上が上がっている面もあります。だから個人的には仕方ないことなのかなと思っていますね。経費がかかるけど、その分売上を上げて利益をアップさせていくしかないですね。

2030年代には1500円を目指すと聞いていますし、今回の50円アップはその過程の一つでしかないのかなと。上がった分の経費を削減してコストカットをするよりは、売上をアップさせていこうと動いています」(40代 コンビニオーナー)

こうした前向きな姿勢を示している雇用側の立場の人に対して、意外にも複雑な思いを抱えているのが、賃金をもらう側のアルバイトの人たちだという。賃金アップはメリットしかないようにも感じるが、いったいなぜなのか…。