公金支出の増額がいとも簡単にできる理由

これについて県関係者が解説する。

「片山副知事が4億円への増額を指示したのは11月中旬のことです。事業を巡っては11月14日の知事説明に使われた文書にも『1億』と書かれてありました。
しかし、この時点ですでに副知事の増額指示が出ており、あまりに急だったので増額の根拠を示せなかった担当者は知事に『ここには今1億円と書いてありますが、これから変わるかもしれません』と説明しています。

その後、11月16日に産業労働部が財政課に出した事業説明書には、総計4000の事業者を金融機関が支援するとの見込みをもとに、1件につき7万5000円~10万円の支援を金融機関へ行なうとして予算額を『3億7500万円』と書いています。
副知事の指示より少ないのは、4億円もの補助金をつけるほど、金融機関が事業者支援を行なうとの見通しが立てられなかったためでしょう。ところが11月21日にこの新方針の説明を受けた斎藤知事は『まるく』4億にしろと、さらに増額を指示しています。予算の根拠はありません」(県関係者)

公金支出の増額がなぜこれほどいい加減に実現するのか。

「ゼロゼロ融資に絡む事業の原資が国の臨時交付金だからです。県の財政には痛くもかゆくもないから財政課も通したのです」(同関係者)

斎藤知事と片山副知事が予算の増額を指示したことを記録した兵庫県職員のメモ(撮影/集英社オンライン)
 
斎藤知事と片山副知事が予算の増額を指示したことを記録した兵庫県職員のメモ(撮影/集英社オンライン)
 
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結局、パレードに寄付をした金融機関への補助金は増額されていた。これについて斎藤知事は8月7日の会見で「4億円で制度設計するようにと片山副知事が財政課に指示をした」「補正予算はキリのいい数字で予算をつけるほうが打ち出しとしてははっきりするので、キリのいい数字にすることはある」と認めた。
記者から「補助金の増額と引き換えにパレードの寄付を要求しなかったか?」と質された知事は「私はそういったことはなかったという風に認識しています」とだけ答えた。

4億円の補助金については、支出が今年度に繰り越され、金融機関側にはまだ渡ってはいない。だが、阪神・オリックスの優勝祝賀パレードにカネを出した企業に国費が入ることに違和感を持つのは他球団のファンだけではないだろう。

告発文書が指摘した疑惑は「金融機関の幹部が補助金と引き換えに協賛金を支出したことを認めない限り、立証は難しい」と話す県関係者もいる。だが、この関係者は「パレード費用の調達に兵庫県が苦労し、自死したBさんが大阪府と調整していたことは確かだ」とも話した。
パレード資金の調達の闇は、疑惑の核心に浮上しつつある。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班