なぜこのタイミングでの逮捕だったのか?

北川容疑者は西日本各地の検察で主要ポストを歴任し大阪地検で検事正にまで上りつめ、天皇の認証官たる検事長ポストにリーチをかけた超エリート。

ところが63歳の定年を待たずに退官し、弁護士登録したいわゆる「ヤメ検」だ。逮捕前までは弁護士法人中央総合法律事務所で「オブカウンセル」という名称の顧問を務めていたが、同事務所は逮捕発表を受けてすぐに顧問委嘱を解消した。

同じ「ヤメ検」である西山弁護士は、父親世代の北川容疑者が起こした事件をどう思うのか。

――非常に基本的なところからお聞きしますが、「検事」とはどのようにしてなるものなのでしょうか。

まずは司法試験を合格することが前提となります。合格者は司法修習という1年間の研修課程に入りますが、これが弁護士と検事(検察官)、裁判官といういわゆる法曹三者になるための実務訓練です。

そこにはそれぞれ現職の検察官、裁判官、弁護士の教官がいて、検察官の教官が「適性があるな」と目を付けた修習生に「検事をやってみないか」と声をかけるのがパターンです。

――志望したからといってなれるわけではないのですね。

そうです。私は司法修習70期で、同期の修了者1563人のうち検察官になったのは67人です。

超エリートだった北山元検事正(産経新聞社)
超エリートだった北山元検事正(産経新聞社)
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――まさに選ばれし人材ですね。西山弁護士が検事だった2017年から2021年当時から北川元検事正のことはご存知だったのでしょうか。

実際にお会いしたことはありませんが、関西の検察ではかなり優秀で名の通った方という認識はありました。

改めて経歴を見ても、大阪をはじめ高知や神戸、京都、那覇と各地で様々な事件や事故に携わったことと思います。那覇では米兵による性加害事件が起きることもあり、そうした事件にも関わっていた可能性もあるのではないかと思われます。

――そんな元エリートを、事件から5年も経ったこのタイミングで大阪高検が逮捕に至った理由はなんでしょう。

私個人の推測は大きくふたつです。ひとつは被害女性が今回の件を改めて処罰してほしいと強い気持ちを抱き告訴 したのではないかということ。ふたつ目は、検察内部では事件発生当時から何らかの形で把握されていたものの、解明しないままフタをしてうやむやになっていた可能性です。なぜ、それを今になって事件化したかといえば、検察庁の組織風土改革の一環として「適切な捜査」に取り組んだのではないかということです。