大腿筋の断面積がサルコペニアの指標
歩くために重要な筋肉ですが、加齢とともに体の筋肉量は減っていくことが知られています。この現象を「サルコペニア」と呼びます。
私たちは、サルコペニアを評価する筋肉量の指標として、大腿筋の断面積を使っています。
大腿筋の断面積は、鼠径部から膝蓋骨上縁の中点を大腿中部とし、この部位のCT画像をもとに、医用画像ビューアシステム「OsiriX(オザイリクス)」を用いて、CT値0〜100HU(CT値の単位はハンスフィールドユニット)を示す領域を筋肉として計測します。
大腿筋の断面積は、総面積とともに、膝を伸ばすときに働く筋(伸筋)である大腿四頭筋のみの断面積(四頭筋断面積)と、ハムストリングスを代表とする大腿を曲げるときに働く筋(屈筋)群の面積(非四頭筋断面積)を区分した、左右の平均値を測定したものも用いています。
内臓肥満も体のバランスに大いに関係している
サルコペニアに加えて、歩くための体のバランスをとれるかどうかには、内臓肥満も大きく関係しています。
内臓肥満の評価のために現在よく使われるのが、へその高さのレベルでのCT画像をもとに算出される内臓脂肪の面積です。
内臓肥満については、メタボリック症候群の診断基準でも用いられる「内臓脂肪の面積が100平方センチメートル以上」としています。
そこで、大腿筋の断面積と内臓脂肪の面積が、姿勢の不安定性の指標である「重心動揺総軌跡長」(重心点の総移動の距離)と関連するかどうかを多変量解析を用いて解析しました。その結果、大腿筋の断面積と内臓脂肪の面積は、独立して重心動揺総軌跡長との関連がみられました。
このことから、大腿筋の断面積の低下と内臓脂肪の面積の増加は、ともに重心動揺総軌跡長を延長することが示唆されています。
正常群、サルコペニア群、内臓肥満群、サルコペニア肥満(サルコペニアに加えて内臓脂肪の面積が100平方センチメートル以上ある場合)群の四つの群において、それぞれの重心動揺総軌跡長の比較を行った結果、四つの群のあいだに明らかな差が認められました。
さらに、サルコペニア肥満群は、正常群と比較して、明らかな総軌跡長の延長を示したことから、サルコペニア肥満では体のバランスを保つことがむずかしくなり、片足立ちの時間が短くなるものと考えています。