「他力本願じゃなくて自分自身を磨いていかないと食っていけないよ」

——歯科医も数が増えていて、昔と比べて稼ぎづらくなっている中、コスト削減しやすい部分が歯科技工料ではないかと指摘する人もいます。

そのような方もおられるでしょう。ただそれは何年も前の、技工士がまだ多かった時代の話で、歯科技工士が減少している今は少なくなっているでしょ。

しかし、これには地域差があって、地方では歯科医院との上下関係で料金を下げざるを得ない側面もある。しかしながら、仕方ないにせよ、安い歯科技工料金を容認しているのも技工士、文句を言っているのも技工士なんです。料金交渉には技術力のみならず、理論武装も必要になると私は思います。
国民皆保険というのは世界にも類を見ない制度ですし、歯科でいえば歯科技工士や歯科衛生士のような縁の下の力持ちがいるから成り立っているというのも事実だと思うんです。

たとえば、われわれは「入れ歯が壊れた。食べれない」という患者さんの声を聞けば、「ちょっと待ってな。寝る時間を割いてでも直してやるよ」という人ばっかりなんですよ。「もう時間遅いんで、明日朝9時に出直してください」とは言わないんですよ。

そういう人たちの集まりだけに何とかしないと、と思う反面、他力本願じゃなくて自分自身を磨いていかないと食っていけないよ、とも思う。

「法的にしっかりお金が入ってくる制度を作ってくれ」と要望する人には「制度ができて、料金が定額となったら、あなたに仕事が来るの?」って。

口を開けたらボタモチ入れてくれる人なんていないんだから、「まずは技術力、知識力だよ」とも言いたくなるわけです。

入れ歯を作成する歯科技工士
入れ歯を作成する歯科技工士
すべての画像を見る

**********

同業者に対してときに辛口な指摘を挟みつつも、森野会長率いる歯科技工士会は今年6月の診療報酬改定では、人材確保につながるベースアップが決まった。そこには歯科の初診料と再診療に歯科技工所の従業員の給料を増やすための人件費が加算されることになった。

詳細はインタビュー後半に続く。

※「集英社オンライン」では、今回の記事に関連した情報を募集しています。下記のメールアドレスかX(Twitter)まで情報をお寄せ下さい。

メールアドレス:
shueisha.online.news@gmail.com

X(Twitter)
@shuon_news  

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班