川上から川下までカバーする優良なビジネスモデル
三菱商事は1970年7月にアメリカのKFCコーポレーションと折半で日本法人を設立した。狙いは多層化した事業を垂直統合することにあった。
三菱商事は1960年代に飼料畜産部を新設していたほか、菱東ブロイラーという会社を設立して鶏肉の生産にも乗り出していた。ブロイラーであれば、鶏は7~8週間ほどで成長し、飼料コストも安い。大量生産するのは簡単だったが、その消費先を確保する必要があった。フライドチキンショップのチェーン化に成功すれば、大量消費が期待できるだけでなく、飼料から畜産、食肉加工、卸、販売までを一貫して行なえる。三菱商事はそれを成し遂げたのだ。
2024年3月末時点のケンタッキーの店舗数は1232。「モスバーガー」の1313店舗に次ぐ規模を誇る。
三菱商事がケンタッキーを売却するのは、資産の入れ替えを進めているからだ。これは三菱商事に限らず大手商社が積極的に推進しているものである。これまでは業績不振の会社を整理するのが常識だった。しかし現在は、一定の投資効率に満たないと判断されるか、ケンタッキーのように少子高齢化などで先細りが懸念されるようなビジネスは切り離されるようになったのだ。
ケンタッキーの足元の業績は好調そのものだ。2024年3月期の売上高は前期比10.8%増の1106億円、営業利益は同61.9%増の58億円だった。営業利益率は5.2%。モスフードサービスの4.5%を上回っている。
実は、ケンタッキーの業績は一時低迷していた。突き抜けるきっかけとなったのが500円ランチだ。クリスマスや誕生日のようなハレの日需要がメインだったケンタッキーが、ワンコインランチを提供することで日常食へと形を変えたのだ。これがヒットする。