自尊心が満たされていた高校時代
《時には中学の制服を着て男と会い、途中で私服に着替えてホテルへ入った。一度きりの客も、十回以上の客も、全員ブログと家の固定電話で集めた。気持ち悪い男もいたが、パパと同じくらいのおじさんが私に1万円くれるという事が気分が良かった。もらったお金は、一体どこに消えるのだろうという程残らなかった。》
漫画もアニメもドラマも音楽もファッションも興味が持てなかった伊藤被告は、当時について《大人の男にモテるという優越感を楽しんでいた》と綴っている。
《今思えば、中学生をお金で買う男なんてくだらないと思うが、中学生の頃の大人とは、絶対的な存在で、大人に認められることで両親にも認められているような勘違いをしていた。特に周りの子たちが同い年や先輩後輩と恋愛をしている中で、自分だけは大人とセックスをしていることで、自分まで大人になったつもりでいた。》
高校生になっても勉強や部活についていけず、部屋に閉じこもるようになった伊藤被告は母の勧めで通信制の高校へと編入する。気分を一新するため、髪型をベリーショートにし、男子用の制服を着て学校へと通うようになった。
すると、他校の女子高生に告白されて交際したり、下級生とバンドを結成したりと、高校生活は充実したものへと転じる。
それでも不特定多数の男性と体を重ねる日々は変わらない。
《私は、始めての恋人(他校の女生徒)と別れてからは、何人かの男と体の関係を持った。同じクラスの男の子を家に誘い、家族のいない間にセックスをした。初めて同い年のセックスの相手は、名前すら思い出せない。次にセックスをしたのは、これも同じクラスのFだった。私が誘うのは、どの集団にもぞくしていない、オタク君ばかりだったと思い出す。》
彼らに入れあげることはなかったが、本人も《中学生の頃に、男からも女からも浮いていて、よく「キモイ」と言われていた事を思えば、女とも男ともセックスできるレベルまでの見た目になったのではないかという認識もあった。》と振り返るように、高校生活は、それまで強い劣等感を抱いてきた伊藤被告の自尊心を満たしてくれるものだったようだ。
しかし、伊藤被告の人生の歯車が再び狂い始めるまで、そう時間はかからなかった。後編に続く。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班