殺意を抱いた理由

6月28日の初公判に現れた伊藤りの被告は犯行当時のふくよかな姿ではなく、少し痩せていた。白い長袖ワイシャツに黒いズボン、ピンクのクロックスを履き、髪はオールバックにして後ろにひとつに束ねた姿で法廷に入ってきた。

罪名は昨年5月のAさんへの殺人未遂と銃砲刀剣類所持等取締法違反、さらに一昨年7月に新宿区歌舞伎町のインターネットカフェに寝泊まりする風俗業の女性の部屋に侵入し3万1000円を窃取した住居侵入窃盗の罪もあった。

これらに伊藤被告は「記憶が薄いですが事実に異論はありません」と答えた。

伊藤りの被告
伊藤りの被告
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弁護側は「犯罪の成立に争いはない」としたものの、伊藤被告がAさんを刺した理由について「令和5年2月5日に男性B とともにAさんが主催する乱交パーティに参加し、Aさんやその知人Cと出会い、その数日後に行われたC主催の乱交パーティで8人の男性と性行為をし、報酬としてCがAさんに渡した1万5000円をAさんからもらえなかったことから不信感を抱いた」、さらに「その数日後も被告人の知人女性やBやCらを含む心情のもつれからトラブルに発展し、Aさんを殺さなければ一生自分の身に関わられるのではないかと思い、刺すに至った」と主張していた。

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法廷では初日から伊藤被告が風俗業に従事していたことや、それ以外にもインターネットを介し男性客を募って売春しその日暮らしをしていた様子、「乱交パーティ」「複数人と性交渉をする」などの言葉が飛び交った。

さらには伊藤被告とAさんによるLINEのやりとりでは「めちゃくちゃにされたい」「どんなふうに?」「優しくめちゃくちゃに」「それは矛盾」といった赤裸々なメッセージが読み上げられ、ラブラブなやり取りをしていた関係が急変し事件に至ったことに、裁判員たちも戸惑いの表情を隠せない様子だった。