生きる力が湧いてこない
中学はほとんど登校しなかったので内申点がなく、定時制高校に進んだ。すると、それまでひきこもっていたのがウソのように登校できるようになったという。
「私がひきこもりから脱することができたのは、義務教育が終わって学校に行かなくてもいい年齢になり、自責の念がなくなったからだと思います。私が行った高校には、今まで関わっていた同級生が1人もいなかったから、同級生からの陰湿ないじめや、それを言えなかった自分、そういうものから解放されたことも大きかったですね」
高校ではバスケット部に入って勉強にも力を入れた。だが、ずっとひきこもっていたのと、もともとやせていたため、すっかり筋肉がなくなってしまい、体力がガクンと低下していた。なかなか疲れが取れないし、思うように頭も回らない。カラダがついて行かないのに頑張り過ぎたのだろう。2年生に進級したところで、また学校に行けなくなった。
「幻聴みたいな声が聞こえるようになって、自分から病院に行きたいと言ったんです。統合失調症と言われて入院したけど、薬を大量に処方されただけで、幻聴もおさまらないし、全然よくならない。薬を飲むと頭がボーっとして何もできないし、呂律も回らない。副作用だらけなのに、その副作用を止める薬を増やされて、副作用止めの副作用が出るんですよ。
そのころは自分のことを世の中で一番かわいそうな人だと思っていました。このままではいけないと思うけど、生きる力が湧いてこなくて、命を絶つことを常に考えていましたね」
退院して家で療養中のこと。突発的に、向精神薬、安定剤、睡眠薬などを大量に飲んでしまい、目が覚めたら丸一日以上経っていたとことがある。
そのまま死んでもおかしくない量だったが、若かったせいか大事には至らなかった。親が医師から叱られて薬の管理を徹底。その後は薬を服用しながら復学し、4年制の定時制高校を5年かけて卒業した。
卒業後も体調がすぐれなかったが、竹内さんはしばらくして元気を取り戻していく。きっかけは、意外な場所を訪れたことだった――。
〈後編へ続く〉『「わかろうと思っても、わからないんだよ!」39歳ひきこもり男性が自分のいじめの過去を打ち明けるきっかけとなった兄の悲痛な叫び』
取材・文/萩原絹代