グミから学ぶ「ヒット商品を生み出すヒント」
――今や大人気のグミをお手本にヒット商品を作るなら、どのような点が応用できそうでしょうか。
グミに関して、私は5つの視点があると考えています。
1「幸せ感」につながる小腹満たし・気分転換ニーズ
2「コスパやタイパ」につながる代替ニーズを満たす
3「楽しさ」につながるバラエティーの豊かさ
4「期待感」が高まる相次ぐ新商品の登場
5「つながっていることを実感」できるコミュニケーションツール
グミはその食感や形、香りなどを通じて人間の五感に訴えやすいお菓子です。加えて、チョコのようにべとつかず、ガムのようにゴミが出ず、安価で購入できます。これらの特徴が「幸せ感」や「コスパ・タイパ」に影響しています。
そして原材料の安さや、製造時に金型を使わなくてよいという作りやすさが、思い切った商品を発売しやすい環境につながり、「楽しさ」や「期待感」を生んでいます。そしてコミュニケーションツールとしての役割が「つながり」を感じさせるのです。
こうした5つの視点は、商品の意外性や期待を上回ったことでの「驚き」、コストパフォーマンス(コスパ)やタイムパフォーマンス(タイパ)を含めた「納得感」を生み、その驚きや納得感を「人に伝えたくなる」という行動につながります。
これらの5つの視点を応用し、そこから「驚き」「納得感」「人に伝えたくなる」という価値を生めば、商品のヒットにつながるのではないでしょうか。
――加えて、近年は「イノベーションを起こすこと」が課題になっている企業も多いと思います。グミの成長から学べることはありますか?
イノベーションを起こすのは、実は日本人の得意分野だと思うんですよね。イノベーション理論を提唱したシュンペーターは、イノベーションを“New Combination”、「新しい結合」だと言っています。
昔から日本人は「和洋折衷」など、何かを組み合わせることが得意です。昔の松下電器(現・パナソニック)はよく「マネした電器」って言われていましたし。
日本はここ30年ほどグローバルスタンダードに翻弄されましたが、海外からイノベーションのシーズ(種)を取ってきて、日本で花開かせるという技術を持っているはずです。
その点では、グミはとても日本的だと思います。グミは約100年前にドイツのボンで生まれた「ハリボー」が起源ですが、今日本で発売されているグミはどれも日本で生まれた商品ばかりです。
今はなんとなく「日本はもうだめだ」と日本を卑下する風潮がありますが、ガラパゴスケータイが唯一無二のオリジナリティを持っていたように、「ガラパゴスでもいいじゃない」と、根拠のない自信をもつことが大事ではないでしょうか。