なぜ世界的IT企業は日本で育たない? 金融業界のIT化は?
──ネットでもよく話題になるのですが、日本から世界的なIT企業が生まれないのはなぜなんでしょう。
なんでなんだろうね。でも、その目のようなものはなくはないんだよ。例えばホリエモン(堀江貴文)とか、Winny(ウィニー)の開発者の故・金子勇さんとか、けっこういるんだけれど、どうもみんな潰されるような印象がある。ああいう芽を育てていれば日本もずいぶん変わっていた気がするけどね。
日本人はそういう先進的な分野に弱いとは思えない。そこそこ面白いアイディアもあるからね。たぶん、社会の仕組みや教育のせいもあるんじゃないかな。「みんな同じがいい」とか「出る杭は打たれる」とかいった日本的な社会の傾向があるように思うね。
もっと自由にやらせていればずいぶん変わっていた可能性がある。ホリエモンがフジテレビを買収していたら、いまごろAmazonプライムみたいなことになっていたかもしれない。
少なくともプロ野球はまったく違っていた。東大の故・金子勇氏が開発したファイル交換ソフトWinnyも、利用者に悪用されて残念なことになってしまったけれど、あれほど画期的なソフトなんだから、商標化すべきだった。若い人にチャレンジさせれば社会的に面白いんだけどね。
──既得権益者が強いから新しい芽が摘まれるんでしょうか。
それはあるね。ホリエモンが現れた時もマスコミが寄ってたかって叩いたでしょう。
──日本社会はそういう傾向が強いですか。
社会が安定しているから既得権がたくさんあるのは間違いないよ。高度経済成長で成功した人たちが既得権者になっている。パワーがあるからね、新参者を許さない。
──アメリカでそうならないのはなぜでしょう。
自由闊達で、下剋上の世界だとみんな割り切っているから、既得権がない。アマゾンもグーグルも新興企業でしょう。経団連のようなものもないから、昔の企業なんかあっという間に潰れる。規制というのもあまりないから、規制緩和をめぐる議論をすることもなく、自由にやっていいという発想がある。そうすると新しい人は伸びやすい。
日本の場合は既得権にどっぷり漬かっている人たちが規制緩和に大反対している。規制緩和が嫌いな人って、みんな既得権に結びついているんだよ。
──そういう人のほうが力があるから意見が通りやすい?
そうなんじゃないかな。