海外ではライドシェアアプリで買い物や宅配も
さて、ヨハネスブルクといえば、一時期は殺人事件が日常茶飯事で、世界で最も危険な場所という風評が立っており、私も身構えていたが、ライドシェアアプリの先駆であるUberを使っていたところ、危険は軽減できるように思えた。
アプリには、緊急ボタンが付いており、そこをクリックすれば本部のほうですぐにその車に対応をするそうで、ホテルに知らないタクシーを呼んでもらうよりもはるかに安心感がある。
そういえば、昔、ロサンゼルスを訪れたときに、流しのタクシーが全くなく、ホテルに車を呼んでもらったが、空港までの道中、運転手に「ニューヨークみたいに手を上げた客を乗せないの?」と聞いてみたところ、「紹介のない見ず知らずの人間を乗せるなんて、危ないじゃないか」という話になり、交通文化の違いを実感した。
ライドシェアの場合は、ドライバーも客も、配車システムにある程度の氏素性を握られているわけで、多少プライバシー保護の懸念は残るものの、安心感はやはり強い。実際、今やロサンゼルスでもライドシェアサービスは、安心、安全な交通手段として普及している。
ヨハネスブルクの学会では、東南アジア8か国、500都市以上で利用されているライドシェアアプリ「Grab」も話題だった。単に配車だけではなく、日常の決済機能も兼ね備えたスグレモノで、タクシーに乗ってちょっと買い物をして、ご飯を食べて返ってくるという行動が、シームレスに同一アプリでできるようになっている。
ほかにもネットショッピングや料理の宅配もカバーしており、日本ではこのレベルのプラットフォームは未だ存在しない。4月に東京と京都の一部で、ライドシェアサービスが限定的に解禁になったばかりだが、これを機会に単に交通の仕組みだけではなく、よりユーザーサイドに立った本質的イノベーションが生まれることを祈っている。
文/井出明