“家庭内オレオレ詐欺”とは?

歯止めが効かなくなった依存症患者は、有り金を失ってもあらゆる手段で軍資金を捻出しようと考える。

両親のクレジットカードや友人からの借金、消費者金融や法外な利子をとる闇金、挙げ句の果てに犯罪行為の片棒を担ぐ闇バイト……。あれよあれよと資金繰りを行い、気づいたときには本文冒頭のような事態に発展してしまうわけだ。

「私は“家庭内オレオレ詐欺”と呼んでいますが、親に電話して『会社の出張費を立て替えないといけない』『ビジネスに失敗した友人からお金が返ってこない』など、あらゆる口実でお金を要求するんです。そこで両親がお金を渡してしまうと、次に要求される額も大きくなり、家庭内トラブルにつながりやすくなります。

社会人の場合は、会社の金を使い込んでしまう事例も多いです。『会社の金を横領して監査が迫っている』『出張費を使い込んで取引先に行けない』『営業車を駐車場に入れたものの一銭もなくて出庫できない』など、かなり切迫した状態でSOSを求めてくる場合もあります。

あと高校生や大学生のように、会社に頼れないとなると、手を出しがちなのが闇バイト。一例として、いわゆる“受け子”と言われる案件で、1回10万円ほどの報酬で、金融庁の職員になりすまして高齢者からキャッシュカードを預かる類です。他にも口座を1万円で売り渡し、詐欺集団に悪用されてしまうケースもよくある話です。

闇バイトのイメージ 写真/Shutterstock.
闇バイトのイメージ 写真/Shutterstock.

こうした闇バイトは、Xで『個人融資』『お金貸します』などで検索ヒットします。そこからLINEや秘匿性の高いテレグラムに移行してやり取りを行い、闇バイトを行う際に登録した個人情報を記入して漏れるという二次被害も発生しています」

よからぬ行為とわかっていながら、目先の金欲しさに手を染めてしまうのも、ギャンブル依存症という病気の恐ろしさを物語っている。田中さんにSOSを寄せる当事者の多くは、パンク寸前だったり、取り返しがつかなくなってしまったケースが大半だ。

件の水原氏にせよ、オンラインカジノに手を染める若年層にせよ、一度ギャンブルにのめり込めば、身を滅ぼすまで離れられないのが依存の恐ろしいところだ。さらに賭博にハマる入り口は、近年オンラインカジノの台頭によって拡大している。気軽に手を出す前に、まずはその危険性を自覚しておくことが大切だろう。


取材・文/佐藤隼秀