「ええツッコミやったら、ここ、ここにいますやん‼」

津田は本多氏の本当の狙いをもちろん知らない。本多氏の言葉に自分の顔を指で指しながら、こわばった表情でこう反論したという。

「本多先生、何てこと言わはるんでっか。ええツッコミやったら、ここ、ここにいますやん‼」

この本多氏の激辛エールが効いたのか、それからしばらくすると津田のツッコミに明らかな変化が生まれた。本多氏がこう目を細める。

「めきめきと津田くんがツッコミの腕を上げてきたんです。以前のようにせっかくのユースケくんのボケを台無しにしたり、邪魔したりすることもない。それどころか、現在を彷彿とさせるようなキレキレのツッコミで、どっと客席を沸かせるシーンも目立つようになりました。

同時にそれまで5年連続で準決勝敗退していたM-1でも07年、08年と2年連続で決勝へと駒を進めた。津田くんのめざましい成長でダイアンは着実に漫才の腕を上げつつあるなという印象でした」

(写真/本多正識氏)
(写真/本多正識氏)

こうなると、NSCの講師としては教え子の急変貌ぶりの理由を知りたい。そこで本多氏は一度、津田に「どうやってツッコミ芸を磨いたんや?」と聞いたことがあったという。津田の返事は「先輩芸人らが繰り出してくれるボケの千本ノックのおかげ」というものだった。

当時、関西ローカルのテレビ番組でダイアンは千鳥やサバンナといった先輩芸人と共演することが多かった。

「津田くんによると、千鳥のふたりやサバンナの高橋君らが自分をかわいがってくれて、ここでツッコミを入れると大爆笑まちがいなしというような巧みなボケをまるで千本ノックのようにがんがんと振ってくれる。そうなると、こちらも先輩のボケをスベらせてはいけないと必死でいいツッコミを返すしかない。

それを繰り返しているうちに、より大きな笑いがとれるようにきちんと考えてからツッコむという意識が身につき、ツッコミの腕が上がった。千鳥さんやサバンナさんには本当に感謝しかないと言っていました」(本多氏)