2月1日に小林製薬は「特にそういった報告はないようです」

その後、クレアチンの数値の上昇と尿蛋白、尿潜血の陽性反応という、最初の症例の女性と似た状態のいずれも50代の女性2人が、1月下旬と2月1日に相次いで板橋病院を訪ねてきた。

「二人目の方も既往歴と持病がなく、紅麹コレステヘルプを飲んでいるとわかりました。この患者さんの生検を行おうとした2月1日に、三人目の女性が私どもの病院を受診し、同様に紅麹コレステヘルプを服用していたと分かりました。これで3例連続したので、やはりこのサプリが疑わしいと思い小林製薬に連絡を入れました」(阿部医師)

三人目の女性も持病がなかった。3人には昨年春にサプリを飲み始めたこと、昨年11月以降に尿の泡立ちに気づいたり、風邪のような症状がでたりしたことなどが共通していた。

サプリは食品感覚で買う人も多く、健康被害の原因になったことに世間では驚きが広がっている。阿部医師らはどのようにして3人のサプリ摂取の事実にたどり着いたのだろうか。

尿細管間質性腎炎の病理組織の写真を示し説明する阿部雅紀医師(撮影/集英社オンライン)
尿細管間質性腎炎の病理組織の写真を示し説明する阿部雅紀医師(撮影/集英社オンライン)

 

「私も鎮痛剤や処方薬による腎障害を治療した経験はありますが、サプリが原因の症例の経験はありませんでした。しかし、われわれは腎臓内科医なので、患者さんには医療機関で処方されている薬だけでなく、必ずサプリの服用の有無も聞くようにしているので今回の発見に至ったと考えています」

サプリに対する阿部医師の思いは複雑だ。

「今回、3名の患者さんはいずれも健康診断でコレステロールが高いと指摘されていました。それで毎年検診を受け、健康志向の高い人たちだったので、薬ではなく食事療法や運動療法でコレステロールを下げたいと考えてサプリの力を借りようとしたようです。そのためにこのような健康被害を受けたことは残念です」

一方、2月1日の電話で阿部医師のチームは小林製薬の顧客相談窓口に「過去に『紅麹コレステヘルプ』を服用して同様の腎障害が起きた患者さんがいないか」と尋ねている。小林製薬は別の部署に問い合わせを回し、同日に電話で病院側に「特にそういった報告はないようです」と回答している。

だが、実際には1月中に2件、同じサプリによる健康被害報告が小林製薬には寄せられており、2月1日に同社がなぜその情報を病院に伝えなかったのかはわかっていない。

小林製薬(撮影/集英社オンライン)
小林製薬(撮影/集英社オンライン)

その後、2月15日になって小林製薬から阿部医師の部下に面談を求めるメールが届き、22日に来院した小林製薬の社員に病院は3人の患者の病状や検査結果などの情報を提供した。

「おそらく(健康被害が出ている人の)病理組織という核心的な写真を小林製薬側が見たのはその時が初めてで、そこで初めて真摯に受け止めていただいたのではないかなと思います」