公表遅れが被害拡大を招いた可能性は否めない
「当社販売の機能性表示食品を摂取された方に腎疾患が発生したとの報告を受けました。これを受け成分分析を行った結果、一部の紅麹原料に『当社の意図しない成分』が含まれている可能性が判明しました」
小林製薬が健康被害の発生と自主回収を始めると発表したのは、3月22日午後5時。対象になったのは「悪玉コレステロールを下げる」などとうたった『紅麹コレステヘルプ』と『ナイシヘルプ+コレステロール』『ナットウキナーゼさらさら粒GOLD』の3製品だ。
「小林製薬には、サプリ摂取者に腎疾患で入院患者が出たとの報告は1月15日に医師から最初に入りました。さらに2月27日までに6人の入院事例を確認しています。情報を得ていながら2か月以上発表をしなかったことについて会社は『調査にかける人員が限られ、製品が原因で症状が起きたと特定できなかった』と説明していますが、最初の情報提供者は医師で、クレーマーの苦情とは次元が違います。同社は国(消費者庁)と大阪市にも22日の発表直前まで連絡をしていません」(社会部記者)
一般の食品と違い、健康サプリはメーカーが毎日摂取することを奨励するケースが多く、問題の紅麹コレステヘルプも1日3粒が摂取の目安だと小林製薬はパッケージに書いている。
「小林製薬が健康被害の情報を得た時点から2か月以上経っており、この間に180粒以上をさらに服用した人がいてもおかしくない。公表遅れが被害拡大を招いた可能性はあるでしょう」(同前)
実際、Xには「健康サプリなんて毎日一定量服用するもんだから最悪だよね」という声が噴出している。タリーズコーヒージャパン創業者の松田公太氏は紅麹コレステヘルプの写真ととともに「約2年間、毎日3錠は摂取していた。健康被害があった場合それをどうやって証明するのか。小林製薬の罪は重い。不安が増幅し、他の大手サプリ会社の売上にも影響が出るだろう」と投稿した。
「紅麹には『ロバスタチン』というコレステロールを低下させる成分が含まれるため健康食品などに多く使われてきました。一方、紅麹をつくる紅麹菌には腎臓疾患を引き起こす恐れがあるとされる「シトリニン」というカビ毒をつくるものがある。欧州連合(EU)はシトリニンの基準値を設定しており、スイスはこれを成分とする食品や薬品の売買が禁じられています」(同前)
ただ小林製薬の発表では、成分分析ではシトリニンは検出されず、「意図しない成分」が含まれている可能性があるとしているが、これが何かは明らかになっていない。同社は昨年9月以降に製造された製品を摂取した人に健康被害が偏っていると厚生労働省に報告しているが、当時紅麹をつくっていた大阪工場は昨年12月に閉鎖されており、管轄する大阪市保健所は製造現場の検証ができない状態だ。