「相談窓口には電話だけで約1万5000件の連絡が寄せられている」
プベルル酸は毒性を持つが、腎臓への影響はよくわかっていない。小林製薬は、プベルル酸がアレルギー反応を引き起こしたり、紅麹の成分と反応して毒性が生じたりする可能性もあるとみていると明らかにした。
大規模な食品パニックに発展しつつある健康被害事件は、原料の紅麹自体ではなく、製造過程での異物混入が原因である可能性が出てきた。小林製薬は28日に厚生労働省にプベルル酸とみられる有害物質の検出の事実を報告したとし、「これ以上自社では分析を進めずにデータを提供し、原因究明は国のほうで行う」と説明した。
同社は22日に「悪玉コレステロールを下げる」とうたう『紅麹コレステヘルプ』や『ナイシヘルプ+コレステロール』『ナットウキナーゼさらさら粒GOLD』の3製品の自主回収方針を発表した。その後、28日夜までに『紅麹コレステヘルプ』を服用したとの情報がある5人の死亡と、114人の入院が判明し、被害は拡大している。
同社幹部は会見で、入院した人の7割程度は退院したとしながら、これ以外に通院中か通院を考えている人が約680人おり、同社の相談窓口には電話だけで約1万5000件の問い合わせが寄せられていることも明らかにした。
「小林製薬は腎疾患で入院患者が出たとの報告を1月15日に医師から受け、その後も五月雨式に健康被害の報告が入って2月27日までに6人の入院事例を確認していました。しかし問題の公表は3月22日に。この対応の遅れが被害を拡大させたとの批判が強まり、会見でもまずこの点に質問が集中しました」(社会部記者)
小林社長は回収を決めた時期を問われ、商品や原料から「未知の物質」が検出されたことが確認された3月18日に判断をしたと説明した。
「しかし発表はさらに4日も後の22日金曜の夕方になりました。会見では『自社の株価への影響を最小化するために市場が閉まる金曜日の夕方まで遅らせたのではないのか』との厳しい声が上がり、社長はそうした意図はなかったと否定しましたが、かなり苦しい表情でした」(社会部記者)