後輩・村上を覚醒させた一言

昨季、“チーム青柳”に初参加してブレイクを果たした村上に対して、青柳はずっともどかしさを感じていたという。それまで2軍では2年連続でタイトルを獲得するなど、素晴らしい技術や感覚を持ちながらも“1軍の壁”に阻まれていた村上に、かつての自分の姿を重ね合わせていたのだ。

そこで、青柳自ら村上を合同自主トレに誘った。自身もプロ入り3年目に“1軍の壁”を感じた経験から、「その壁は自分自身で作りあげてしまっているもの。1軍と2軍にそこまでの差はない」と伝えた。

青柳晃洋Instagramより
青柳晃洋Instagramより

「ここに集まっているのは(ストレートが)145キロ~150キロくらいの連中です」

大谷翔平(ドジャース)のように160キロを超えるストレートや、スウィーパー、フォークをストライクゾーンへアバウトに投げればいいというわけではない。とはいえ、先発投手であれば7回2失点でも及第点であり、すべてのボールを完璧に投げなくてもいい――。

かつて、メジャー355勝投手のグレッグ・マダックスが「パーフェクトではなくグッドを目指せ」と語っていたが、青柳も同様の金言を後輩に授け、マインドブロックを取り払った。

ピッチングセンス抜群の村上は“師匠”のアドバイスを受けると、すべての球種の精度や制球力はそのままに、球威や球速が大幅に向上した。昨季は7回パーフェクトピッチングを披露した先発初登板(4月12日の巨人戦)から自信をつけ、自ら作りあげてしまっていた“1軍の壁”を取り払うことで覚醒。一気にMVP&新人王へと駆け上がった。