「飲食店で安く食べたい」からの消費者意識の変化
バランスよく運営している中華料理店といえば王将フードサービスだ。2024年3月期の売上高は1013億円を予想している。初の1000億円を突破する見込みだ。王将はコロナ禍の2021年3月期でも6%程度の減収に留めた驚異的な会社である。
商環境が激変する中でテイクアウト・デリバリーの需要をいち早く獲得したことが窮地を救うことになったが、王将の強さは客単価の高さにも表れている。
王将は2021年3月期に客単価が1000円を超えた。日高屋は800円前後だ。幸楽苑も日高屋と同水準だと予想できる。直営店1店舗当たりの売上を見ると、客単価の違いによる業績への影響が明らかになる。
2023年上半期において、直営店の売上高から直営店数を割って1店舗当たりの売上推定値を出すと、王将は8300万円、日高屋は5300万円、幸楽苑は3100万円となる。これが、1店舗が半年で稼ぐ金額の目安だ。王将は圧倒的な収益力で他店を引き離している。
日高屋と幸楽苑は、原価率の抑制に心血を注いできた会社だ。日高屋の原価率は27.8%、幸楽苑が28.8%だ。王将は31.8%である。両者ともにデフレ下で価格を勝負に勢力を拡大してきた。原価を切り詰め、安く提供するビジネスモデルを構築したのだ。しかし、「外食くらいは贅沢に」という消費者意識の高まりとともに、少しお金をかけても美味しいものを食べたいという需要が高まっている。
日高屋が今のビジネスモデルを堅持したまま、ロードサイド店へと軸足を移すのは難易度が高いと言えるだろう。同社の分水嶺を迎えているのは間違いない。
取材・文/不破聡