岸田文雄首相の国賓待遇による訪米は4月に先送り
政治改革に背水の陣で挑む覚悟を示したとも報道された今回の派閥解消について、政治部記者はこう語る。
「ぶら下りでも薄ら笑いを浮かべながら宏池会(岸田派)解散について言及する岸田首相を見て、記者はみな『この人はヤバイ』と囁きあっていました。つまり岸田氏は首相を続けるためには手段を選ばない人だ、というところが如実に見えたのです。独断で派閥解散を強行した理由は、派閥解消で支持率を上げて解散総選挙に持っていき、続投の道を拓こうという見方が有力です」
開き直りにも見える岸田首相のの派閥解散宣言。その背景には、東京地検が安倍派だけではなく、岸田派の元会計責任者を立件したことで岸田氏に批判が集中する可能性が高くなったことも理由のひとつにあげられるだろう。
岸田首相は「事務処理上の疎漏であると承知しているが、私自身、在任中から今日までそれ以上のことは承知してない」と強調したが、いかにも苦しい言い訳だった。パーティー券捜査が岸田派までに及んだことで支持率がさらに減少することは目に見えており、追い詰められていたのだ。
だが、岸田首相が焦る理由はもう1つ別にあったとも。岸田氏が派閥解散の意向を表明した日には、もう1つ重要なニュースが報道されていた。
18日、共同通信など各報道機関が、「日米両政府が岸田文雄首相の国賓待遇による訪米を4月に先送りし、首相とバイデン大統領の首脳会談を、4月10日を軸に実施する方向で調整していることがわかった」と報じたのだ。理由は「バイデン氏が3月7日に一般教書演説をする日程が決まり、会談が難しくなった」とされた。
岸田氏の訪米については昨秋から浮上しており、岸田首相がバイデン大統領から国賓待遇での招待を受け、米議会で演説を行うなどのプランが練られてきた。岸田首相にとって最大の後ろ盾の1つがバイデン大統領であるところは衆目の一致するところ。
バイデン大統領は、岸田首相が組んできた米国のメリットにもなる防衛費のGDP比2%への増額などを高く評価し、バイデン政権として広島サミットの開催や、ウクライナ電撃訪問などの岸田外交を強く後押ししてきた。もし、岸田首相の国賓級待遇での訪米が実現すれば、2015年の安倍晋三元首相以来、9年ぶり。“外交の岸田”を自認する首相にとって、国賓待遇での招待、そして米議会での演説は岸田政権のハイライトになるはずのイベントだった。
ところが――。
「岸田首相は年始の会見で3月6日の国賓訪米日程を発表して、意気揚々とアメリカに旅立つつもりだったのですが、会見での発表にバイデン政権が『待った』をかけたのです」(外務省担当記者)