ガザが可視化するこの世界の矛盾

アジア・アフリカの富を収奪し民を搾取する欧米諸国(+「名誉白人国家」日本)が、国境という牢の檻によってそれ以外の国々からの人間の自由な移動を禁ずることで成り立っている「領域国民国家システム」は巨大な牢獄です。「天井のない監獄」と呼ばれるガザと今そこで起こっているイスラエルによる人権侵害は、ナショナリズムや人権などの美辞麗句によって隠蔽されている世界の不正、矛盾を拡大し、顕微鏡で見るように解像度をあげて可視化して我々の眼の前に突き付けたものなのです。

トルコのガザへのメッセージはイスラエルと欧米への他責的批判だけではありません。クルトゥルムス国会議長は、前述の国連批判の前に「イスラエルの最大の強みはイスラーム世界の弱さ、イスラーム世界の不統一と無秩序のイスラーム世界の現状である」とイスラエル建国の責任が誰にあったのであれ、現在進行形のイスラエルによるガザでの蛮行を許しているのは、イスラーム世界の盟主カリフをいただくオスマン帝国を滅ぼし西欧の領域国民国家システムに取り込まれて分裂して内紛により力を殺がれて無力化されている自分たち自身にあることをムスリム諸国民に向けて訴えているのです。

なるほどサウジアラビア、アラブ首長国連邦、エジプトなどはイスラエルのガザのパレスチナ人の虐殺を非難しパレスチナの独立の支持を口にしています。しかしその本意はパレスチナ人のためではありません。つまり「パレスチナ人はパレスチナを出るな、パレスチナ“難民”を自国には決して受け入れない」との宣言であり、批判の矛先が自分たちに向かうのを恐れて、前もってイスラエルによるパレスチナの不法占拠に目先を逸らせるためにおこなった目くらましの宣言に過ぎません。

人類と大地を既得権者たちが支配する抑圧的カルテルの手から解放し、言語や民族や宗教の違いを超えて、法の支配の下に全ての住民が生命と財産の安全を保障されて域内のどこにでも移動、移住することができるイスラームのカリフ制の理念によってしか、ユダヤ人とパレスチナ人の公正な共存はありえません。

それが多様な言語、民族、宗教が混じり合った多元的エスニシティ集団の共存のシステムであったオスマン帝国の継承国家トルコからの、ガザの悲劇の解決を目指す世界の全ての人々に向けられたメッセージなのです。

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