原価率50%を超える奇跡のラーメン

加藤さんは試作の前にダシについて書かれた本を何冊も読み、科学的な根拠をもとに旨味の出し方をしっかり構築してからラーメン作りに入ったのだ。試作は正味1年で10杯も作っていない。最終的に醤油が決まるまで、ほとんど加藤さんの頭の中で味を作り上げたラーメンだった。

2018年12月に店長の坂田さんに声をかけ、1月に試作し、4月に「中華そば 竹千代」はオープンした。

「中華そば 竹千代」
「中華そば 竹千代」

見た目はオーソドックスだが、食材の旨味が詰まりに詰まったラーメンで、なんと原価率は50%を超えている。特に高いのがメンマだ。希少な国産のこだわりメンマで、ラーメン1杯に入れる分量でなんと100円以上する。

創業前はこれを500円で出したかったというのだからさらに驚きだ。

「ただ、うちのラーメンは他店と比べて光熱費が安いんです。ダシをとるのにガスは使わず、水出しということもあり、動物系をグラグラ炊くお店に比べて圧倒的に光熱費は安く済みます。最終的に帳尻を合わせて何とかやってきました」(加藤さん)

コロナ禍を乗り越え、光熱費の高騰もさほど影響がないというのに、ここに来て突然の閉店。いったい何があったのか。

「店長の坂田さんが4月に辞めることになり、この先続けられないなと思ったときに、残った従業員が続けたいと言ってくれたので、もうしばらく頑張ることにしました。しかしそれも続かず、11月末で閉店することに決めたんです」(加藤さん)

簡単にいえば「人」の問題である。いろいろなラーメン店を取材している中で、この「人」の問題というのは本当に大きい。近年ラーメン店は従業員の募集をかけてもなかなか応募が集まらない傾向にある。各社、労働環境や働き方の改善を図っているのとは裏腹に根強く残るハードワークのイメージが強く、人が集まらないのである。

「給与や待遇などは時代に合わせて改善してきていますが、拘束時間が長く、立ち仕事で、カウンターのみのお店だと息つく暇もない。好きじゃないとできない仕事なんだと思います。やれる人がいなくなってしまったということです」(加藤さん)