真の歌は、誕生した時のままでも、時代とともに成長していく
『時代』が快挙を成し遂げることができたのは、病床の父への想いが込められた楽曲そのものに、本当の「音楽の力」があったからではないか。
さらには歌手としての「もう一人の自分」にも、父の魂が乗り移っていたのかもしれない。(1976年1月、父親は意識が戻らないまま息を引き取った)。
だから優しい言葉であっても、伝わってくる想いは深く、聴く者に力を与えてくれるのだろう。
1975年12月21日、中島みゆき2枚目のシングルとしてリリースされた『時代』は、その時は大きなヒットになったわけではなかった。
しかし、後年になって卒業式で歌われたり、音楽の教科書に掲載されたり、他のシンガーにカバーされたりしたことで、広く親しまれるスタンダード・ソングになっていった。その後も中島みゆきの手で、新たな別ヴァージョンが作られてアルバムやシングルに収録された。
こうして真の歌は、誕生した時のままでも、時代とともに成長していく。
文/佐藤剛 編集/TAP the POP
参考文献/引用
・川上源一著『子どもに学ぶ』(財団法人ヤマハ音楽振興会)