1回3万円の「女性用出張マッサージ」が初体験
父親は幸乃が小学2年生のときに離婚し、家を出ていった。
それから間もなく、一番上の兄が自殺。姉もリストカットやオーバードーズ(薬の大量服薬)をしていたそうだ。家庭崩壊、いじめ、不登校、兄姉の自殺と自傷……。そんな暗い日々のなかで、幸乃が唯一関心を持ったのが「性」だった。
最初は家の近くの公園でポルノ雑誌を拾ったのがきっかけだった。彼女はその雑誌を草むらに隠し、毎日のように見に行った。彼女の目には「なんか楽しそうな世界」に映ったという。中学卒業後、彼女は短期のアルバイトを転々としていたが、異性と出会う機会はまったくなかった。
初めての性体験は21歳のとき。
彼女はネットで見つけた「女性用出張マッサージ」に連絡をし、1回3万円で初めての体験をしたという。
「すごい楽しかった。なんかかわいがってくれるし、おしゃべりもしてくれる。でも、全然お金なかったから、2回会って終わりになっちゃった。割引はダメって言われた。バイトのお金、すぐにお洋服に使っちゃうので全然残らないの」
彼女はバイトの給料の半分を母親に取られ、もう半分をすべて洋服につぎ込んでいたのだ。発達障害の特性からか、計画的にお金を貯めることはできなかったらしい。
幸乃は女性用出張マッサージ以外で性行為をするにはどうすればいいか考えた。思いついたのが、アダルトビデオへの出演だった。彼女は自分でプロダクションを探し、わざわざ自費で東京まで行って面接を受けた。だが、うまくコミュニケーションができないことから、プロダクション側から提案されたのは過激なSM系のビデオ出演だった。幸乃はそれを受け入れ、2本に出演した。
「何人もの男の人とするビデオだった。5人とかいたかも。(感想は)わー、すごいって思った。なんかビデオみたいって。もらったお金は(1本)3万円。だから全部で6万円。でも、東京に行くお金とか、ホテルに泊まるお金とかで全部なくなっちゃったから、あー、そういうもんだなって思った」
面接と撮影のため東京と地元を3回往復し、自費でホテルに泊まったのであれば、赤字だったに違いない。ちなみに幸乃は後日、プロダクションに連絡して出演したビデオを送ってほしいと頼んだそうだ。すると、理由はわからないが、事情があって販売は見送られることになった、と伝えられたという。正規のプロダクションではなかったのかもしれない。
それでも幸乃はビデオ出演をきっかけに、さらに性的な興味を膨らませた。先のプロダクションに再び電話して、「どうすれば性行為ができるか」を相談した。そして、プロダクション側が提案したのが風俗だった。