たどり着いたのは60分で6500円避妊なしの底辺風俗店

「プロダクションの社長さんからは『そんなにしたければ風俗行けば』って言われた。お金ももらえるよって。私、自分が働けると思ってなかったから、えーすごいって思って、どうすればいいのって聞いて教えてもらった」

半年後、彼女は風俗店の寮に入り、働くことになる。だが、指名がほとんどつかないので、寮費を払えなくなって追い出された。その後、別の風俗店に入っては解雇されるということを何度かくり返した。それでも彼女は風俗は自分にとって天職だと感じていたそうだ。

写真はイメージです
写真はイメージです

「普通のバイトよりは向いてた。私、朝ちゃんと起きれないし、仕事もみんなみたいにうまくできない。でも、風俗だとお仕事はお昼からだし、遅刻しても許してくれるし、店長にお弁当とかお菓子とか買ってあげると『ありがとう』って喜んでくれる。お客さんもうれしそうにしてくれる。なんかそういうのってうれしい」

そんな幸乃がたどり着いたのは、底辺風俗店だった。格安で避妊せずに本番ができるという店だ。客が支払うのは60分で6500円。そのうち幸乃の取り分は雑費など引かれて2500円だった。

厳しい条件だが、生きづらさを抱えた彼女は、それを受け入れて一生懸命に働いた。しかし、幸乃を待っていたのは妊娠という現実だった。客の子を身ごもり、店に借金をして中絶手術を受けたのである。

彼女が心を病んだのはその直後だった。彼女にいわせれば「赤ちゃんを殺したっていう、なんか悪い気持ち(罪悪感)」に苛まれ、来る日も来る日も堕胎した赤ん坊のことを思い出しているうちに「私も死にたい。死んで一緒にいてあげたい」と思うようになったそうだ。それが原因で、彼女はオーバードーズによる自殺未遂を3度くり返した。

福祉につながったきっかけは、自殺未遂で運ばれた病院でソーシャルワーカーに出会えったことだった。ソーシャルワーカーは、幸乃に障害があるのではないかと思い、検査を受けさせたところ、発達障害の診断が出たのだ。ここで彼女は初めて自分に発達障害があることを知る。

それ以降、彼女は生活保護を受給しながら生きることになったが、性的な関心が減ることはなかった。そこで生活保護を受けながら再び風俗店で働くようになるのである。

「お洋服に使うお金がほしかったのと、働いたら店長さんが喜ぶから。あと、お客さんが待っててくれてるから。やっぱり店長さんとか、お客さんに喜んでもらえるとすごく楽しい。死にたいって気持ちがなくなる」

今も彼女は週2回のペースで風俗の仕事をしている。