最高に居心地のいいメガネ屋さんで、店主ご夫妻と過ごした至福の時間
福井県福井市新田塚町にある、鯖江産メガネのセレクトショップ・田中眼鏡本舗(たなかがんきょうほんぽ)は、親切かつ的確なアドバイスで、自分にぴったりのメガネを選ぶ手伝いをしてくれる、最高のメガネ屋さんだと聞かされていた。
http://www.t-honpo.com/#home
仕事柄もあって強い近眼、しかも最近は老眼も併発しているため、メガネを手放せない僕は、いつか福井に行く機会があったら、その店を訪ねてみたいと思っていたのだ。
田中眼鏡本舗は、数多くのアンティークなアイテムで店内を飾るおしゃれなお店だった。平日の昼下がりであり、客は僕一人。
いくつかのメガネを試着していたら、女性の店員さん(店主の奥様でした)に声をかけられ、フレーム選びを手伝ってもらうことになった。
サーモントタイプのメガネが欲しかったので、候補を数本まで絞って悩み、「この中だと、どれがいいですかね?」と尋ねると、「男の人に見てもらったほうがいいですよね」と、奥にいた店主を呼んでくれた。
店主・田中昌幸さんは、候補のフレームをかけるたびに僕の顔をじっと観察し、これという一本に絞り込んでくれた。
僕としても納得のいく選択だったので、それ以上は迷うことなく購入した。
フレーム選びや視力測定の間に田中さんや奥さんと交わした会話は、とても楽しいものだった。
店内のアンティークは、最初は田中さんがいくつか買って飾っていたところ、お店に来るお客さんが次々と、「こういうの、我が家にもあるよ」と言って、持ち寄ってくれたものなのだそうだ。
店の一角には『POPEYE』の古雑誌が大量に置いてあった。
それを懐かしい〜!と見ながら、話の流れで自然に、僕は宝島社のファッション誌『smart』の元編集長であることを明かした。
すると店主は、植草甚一の古い書籍『ワンダー植草・甚一ランド』を持ってきてくれた。
よく分かってらっしゃる! 福井まで来て、なんだか自分のルーツ・オブ・ルーツに触れた気がした。
これらの古本・古雑誌も、店主の趣味を知っている年配のお客さんが、家から持ってきて提供してくれたのだとか。なんだか、福井という街も楽しそうだ。
細かい話をあげるとキリがないが、とにかく田中眼鏡本舗の店主ご夫妻とはどこまでも話が合い、めちゃくちゃ楽しい時間を過ごすことができた。
ここにならいつまででもいられそうだと思ったのだが、僕の旅の時間は限られているし、次のお客さんも来店したので、お礼を言ってお店を去ることにした。
帰りがけ、田中さんにこれから僕が行くべき福井のおすすめはどこですか?(なるべくマニアックなところで)と聞いたら、“丹厳洞”と“大瀧神社”という予想だにしないスポットを教えてくれた。
さっそくカーナビにその2箇所を入力して出発!
僕の車中泊による“男一匹宝探しの北陸旅”はまだまだ続くのだ。
ちなみに、8日後に東京の我が家に届いたメガネは最高の出来栄えで、手入れしながら一生使うべき“宝物”と認定しました。
写真・文/佐藤誠二朗