不満募らせる安倍氏、声を掛けた先は

2021年10月の衆院選では「絶対安定多数」の261議席を確保した。

党内への配慮の積み重ねもあって、永田町は表向き静かにみえるが、火種はあった。

最大派閥会長の安倍は、勢力が同数で第2位の派閥を率いる麻生や茂木ほどの処遇を受けているわけではなかった。

外交ボイコットも、早いタイミングで発すべきだと繰り返していたが、岸田はすぐに動かなかったため、不満を募らせていた。

自民党幹部「岸田政権は鵺のような政権だ」…発足当初から不安を募らせていた故・安倍晋三が菅義偉にしていたお願いごと_5
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菅周辺によると、その安倍はこの頃、菅に「早く派閥をつくったら?」と声をかけた。

安倍は岸田が同じ宏池会を源流とする麻生派や谷垣グループと一緒になる「大宏池会」構想を進めると警戒していたためだ。単純に足すと安倍派を上回る最大勢力となる。

菅に派閥をつくる考えはなかったが、政権中枢と距離ができている元幹事長の二階俊博が率いる二階派、前国会対策委員長(現選挙対策委員長)の森山裕率いる森山派などと連携する選択肢もあった。

与党が衆院選で勝っても次の参院選で負ければ、政権は暗礁に乗り上げる。過去に繰り返された歴史を意識しない与党政治家はいない。

菅に近いある議員は「参院選の結果次第で政局は大きく動くだろう」と語った。

文/朝日新聞政治部 写真/Shutterstock

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『鵺の政権 ドキュメント岸田官邸620日』(朝日新書) 
朝日新聞政治部 (著)
自民党幹部「岸田政権は鵺のような政権だ」…発足当初から不安を募らせていた故・安倍晋三が菅義偉にしていたお願いごと_6
2023/9/13
¥979 
240ページ
ISBN:978-4022952332
史上最も正体がつかめない政権の
ヴェールに包まれた虚像を浮き彫りにする!


岸田官邸の最大の危うさは、
政治ではなく行政のような
「状況追従主義」にある。
先手は打つが理念と熟慮に欠け求心力がなく、
稚拙な政策のツケはやがて国民に及ぶ——。
迷走する政権の深層を克明に捉えた、
「朝日新聞」大反響連載「岸田官邸の実像」、待望の書籍化! 

<目次>
第1章 政権発足
第2章 オミクロン攻防
第3章 国葬の代償
第4章 辞任ドミノ
第5章 日韓外交
第6章 ウクライナ訪問の舞台裏
第7章 岸田官邸の実像
第8章 識者はどうみる
終章 G7広島サミット  
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