受験生への対応「朝令暮改と言われようが……」

首相就任3カ月を迎えた22年1月4日、岸田は新年の伊勢参り後の記者会見で、自らの政権運営を誇った。

「一度物事を決めたとしても、状況が変化したならば、あるいは様々な議論が行われた結果を受けて、柔軟な対応をする。こういったことも躊躇してはならないと思っている」

しかし、「柔軟な対応」に伴う混乱は、「10万円給付」をめぐる方針転換ばかりではなかった。

混乱はその8日前にも起きていた。

年の瀬も押し迫った2021年12月27日、岸田は記者団を前に、切り出した。

「受験生の皆さんの間に不安が広がっている。こうした不安を重く受け止めて、私から別室受験を含め、できる限り受験機会を確保する方策について、昨日、文部科学相に検討を指示した」

新型コロナウイルスのオミクロン株感染者の濃厚接触者となった受験生への対応が問題になっていた。宿泊施設への滞在が求められている期間中は受験できず、追試験で対応するとの通知を文科省が12月24日に出し、批判が高まった。

自民党幹部「岸田政権は鵺のような政権だ」…発足当初から不安を募らせていた故・安倍晋三が菅義偉にしていたお願いごと_2

岸田は文科省が決定したばかりの対応を覆すように指示したと述べ、「一両日中に具体的な方策を示せると考えている」と、むしろ胸を張った。

岸田が11月に出したオミクロン株の水際対策強化の指示をきっかけに、国土交通省が日本に到着する国際線の新規予約を12月末まで止めるよう航空会社に要請し、混乱した問題と構造は同じだ。

海外滞在の日本人が帰国できなくなる可能性が指摘されて批判が噴出すると、岸田は3日後に要請を撤回させた。官邸幹部は「みんな走りながらやっているからこうなる」と拙速さを認めた。

ワクチンの3回目接種でも、前倒し接種を求める声の高まりを受け、時期や対象など詳細を詰めきらぬまま前倒しを表明して地方自治体の混乱を招いた。

別の幹部は「軌道修正は当然だ。朝令暮改と言われようが妥当な判断だ」と話した。