すき家の強みとなっている2大要因とは…

出店戦略において、吉野家と松屋はこれまで都市部の繁華街を中心に出店してきた。

特に松屋はその店舗展開の多くが都市部で占められていた。松屋は全店で牛丼だけでなく、カレーにもみそ汁をサービスで提供するなど、低価格でお得感の強さが他社との差別化要因になっていた。学生や都市部で働く若い会社員が主なターゲットで、客単価を低くして集客をねらい、それを補うために好立地に出店し、高回転させる戦略をとっていた。

その戦略がコロナ禍で裏目に出た。在宅ワークが推奨させる風潮の中、都市部のオフィス街から人が消えたからだ。

吉野家は中年男性が主な客層ターゲットで、松屋と同じく首都圏や地方都市への出店が中心だった。メニュー構成は牛丼がメイン。「牛丼の吉野家」というメニューを絞った戦略で、他店と比較すると、味における顧客満足度の高さが特徴だ。

吉野家の「牛丼」
吉野家の「牛丼」

一方で、すき家は繁華街のみならず、郊外型のロードサイド店も多く出店していたため、巣ごもり需要の受け皿となった。松屋、吉野家よりもコロナ禍における客数減少を最小限に留めることができたのは、幅広いエリアでの出店戦略があったためだ。

しかし、幅広いエリアに店舗展開しているだけで集客できるほど、ビジネスは単純ではない。それぞれの店舗において顧客が抱えるさまざまな課題を解決しなければならないからだ。

LINEリサーチが2022年に行った牛丼チェーンの調査(「LINEユーザーを対象にしたスマートフォンWeb調査」)に興味深い結果が出ている。好きな牛丼チェーンのトップはすき家で34.1%。吉野家が27.3%、松屋が10.7%と続いている。

このリサーチの中では、各チェーンを好きな理由の詳細も出ている。

吉野家を好きな人の理由のトップは「肉がおいしい」、2位は「つゆがおいしい」。やはり、牛丼本来のファンを根強く抱えていることがわかる。松屋を好きな人の理由のトップは「値段が安い」、2位は「コストパフォーマンスがいい」。そして、すき家を好きな人の理由のトップは、「牛丼の種類が充実している」で、2位「立地がいい」となった。

広い駐車場があるロードサイド店が多いのも「すき家」の特徴
広い駐車場があるロードサイド店が多いのも「すき家」の特徴

すき家の客層ターゲットはファミリー層だ。それゆえに顧客は子供からシルバー層まで、幅広く食べられるメニューを用意してほしいと考えている。必然的にすき家はメニュー開発を強化する必要がある。