「世界4位の武器輸出国をめざす」
こうした日本の現状を見るにつけ、航空技術は自国による絶え間ない開発と生産を経てこそ発展するものだと痛感せざるを得ない。
韓国も日本同様、F-35をすでに40機購入し、さらに今後、最大20機を導入する計画だという。ただ、F-35は高額なので、購入機数はどうしても限られてしまう。そのため国防に必要な機体数を確保できず、韓国空軍の機体更新はおぼつかない。
また、機体の整備や部品の供給など、兵装の問題が出た場合、輸入だけに頼ると安全保障上、予期しないトラブルも発生しかねない。輸入先国が自国のニーズを聞き入れてくれるとはかぎらないからだ。為替変動で自国通貨安となれば、貴重な外貨が外国に流出するリスクもある。
そこに自国開発のハードルは高いとはいえ、国産戦闘機がもうひとつのオプションとしてあれば、購入先国の意向に左右され、自国の安全保障に悪影響が及ぶリスクは最小限に抑えられる。
兵器の価格は本体の値段が3分の1、兵器が退役するまでの改修費やアップグレード、ソフトウエア更新などの運用コストが3分の2を占めるとされる。KF-21の価格は輸出を含む生産数次第となるが、少なくとも運用コストはF-35の半分を目指すとされている。その低価格を実現するには開発と輸出のバランスをとりながら、国内の軍需関連産業の育成を進めていくことが必要だろう。
尹大統領が世界4位の武器輸出国をめざすと豪語するほど、順調な韓国の兵器産業。この「国産超音速戦闘機」プロジェクトの成否がその野望実現の試金石になるのはまちがいない。近い将来の輸出市場も含めて韓国のポラメ(若鷹)の動向を今後も注視していきたい。
文/世良光弘 写真/shutterstock