自民党議員・職員の懐の深さ
政権に厳しいスタンスを取るゲンダイ記者は自民党議員に煙たがられそうだと思うかもしれないが、実はそうでもない。自民党議員は案外、懐が深い。長く政権与党であるため、幅広い有権者を代表している意識が強いベテランになればなるほど分け隔てがない。かつての自民党には、権力は批判されて当然、との認識もあった。
それは自民党職員も同様で、政局や選挙取材などでいつも私に貴重な視点を与えてくれたのは、党本部や東京都連の職員だった。そこは組織を超えた人間同士の付き合い。いろいろと勉強させてもらった。
だが一方で、2012年末からの第2次安倍政権時代に自民党は劣化が進んだのではないか、という思いも持っている。庶民生活を顧みず、野党を軽視し、唯我独尊になっているのではないか。
政権発足から半年後の2013年8月19日発行のゲンダイ1面で、政治ジャーナリストの泉宏氏がこうコメントをしていた。
「佐藤内閣から40年政治を見てきましたが、いまは内閣も自民党内も『物言えば唇寒し』みたいになっている。つまり、誰もトップに逆らわない。こんな異様な状態は初めてです。かつては閣内にいても、首相に対し言うべきことはしっかり言う大臣がいた。『私は賛成できない』と辞任した閣僚もいました。それなのに、いまは情けないの一語です」
「自民党の3分の2は安倍さんのやり方に本音では反対ですよ。しかし、高支持率に加えて、野党がだらしないから、安倍政権は今後、最長5年8カ月の長期で続く可能性がある。だからみな、安倍さんに睨まれたら冷や飯を食わされる、と黙ってしまう。それでどの派閥も長いものに巻かれろになっているのです」
実際に、その通りになった。最長5年8カ月どころか、2期6年だった自民党総裁の任期を3期9年まで延ばし、7年8カ月の憲政史上最長の政権を築いた。政高党低と一強政治で、安倍首相は〝絶対的存在〟になり、その結果、自民党内の活力が大きく失われた。
文/小塚かおる