シリアスで緊迫感のある作品なのに、現場はコメディ?
──チ・チャンウクさんは先ほど人物の内面を深く掘り下げるようにしていたとおっしゃっていましたが、今回のジュンモ役は、これまでには演じたことのないキャラクターですよね。どのような挑戦でしたか?
チ・チャンウク 僕にとっては、すべての作品において毎回が新たなチャレンジになっていると思うのですが、今回のジュンモ役で僕が表現したかったのは “人間らしさ”です。
一般的にドラマの主人公は、職業に対する使命感なり正義感というものが原動力となって突き動かされるケースが多いと思うのですが、ジュンモの場合はそれよりも、もっと人間らしさ、ファンタジーではなくリアルな人間味を表現したかった。ジュンモならこういう状況でこういった選択をするだろうな、というふうに理解しながら作り上げていきました。彼の人間くささみたいなものが、作品から伝わるといいなと思います。
これまでも絶えず自分なりの新しいチャレンジを試みてきましたが、監督や演出の方が考えていることを、いい意味で裏切る表現ができたとき、そこから快感を得ることもあるんですね。特に今回は、新しいものを作り出したいという思いや、刺激を絶えず探しているような作業でした。これまで見せたことのない自分の姿を模索しながら、引き出していた期間だったと思います。
──シリアスで緊迫感のあるシーンが多い作品ですが、現場の雰囲気はどうでしたか?
イム・セミ コメディでした(笑)。今日は誰が一番みんなを笑わせられるのかとか、もっと楽しい雰囲気を作れるのかということを毎日やっていて。本当に現場は楽しかったです! アクションシーンを撮影する前も、笑顔があふれていましたね(笑)。アクションシーンの撮影はとても時間がかかるのですが、あちこちから男性陣の「わははっ!」といった笑い声が聞こえてくるような撮影現場でした。
チ・チャンウク 現場では本当につまらない話を言い合ったり、言葉遊びをしたりダジャレを言ったり、絶えず笑い合っている感じでしたね。作品自体の雰囲気は重い雰囲気で、僕の役も最後まで笑うシーンがひとつもないぐらいでしたが、僕ら俳優たちはモニターの裏で、いつもおしゃべりしたり冗談を言い合ったり、楽しい雰囲気でした。
ウィ・ハジュン そうなんです。本当に楽しい日々でした。ただ、実は僕は撮影中に怪我をしてしまいまして。手や顔、顎などから実際に血が出てしまったこともありましたし、初めて救急車に乗って運ばれる経験もしました。そんな状況でありながらも、『最悪の悪』という作品が大ヒットすることは、はっきり感じることができました。大変だったけどがんばった甲斐があったと思っています。すべてが忘れられないことばかりの、素晴らしい現場でした。