カギはサイレントマジョリティーの投票行動

 もうひとつ、変わり目の後押しをするのは選挙です。ノイジーマイノリティーと、サイレントマジョリティーの話をしましたが、マイノリティーだけどノイジーなのは組織票なんです。組織票は会社組織、宗教団体、労働団体、みんな行くので投票率も高い。いわゆる一般ピープルのサイレントマジョリティーは、まちで手を振ってくれても投票に行かないんです。

この構造があるから、本当は少数のノイジーな人々が選挙で効果を表してしまう。投票率で計算するとまちの人の半数が手を振っても勝てない。だからまちで手を振ってくれるサイレントマジョリティーの支持を7割を超えるようにしようと私はいつも言うんです。逆に言えば、7割のサイレントマジョリティーの投票行動でまちを変えられるということです。

藻谷 サイレントマジョリティーの半分は投票には行かないという現実を見据えて、それでも変革をするには、そういうやり方しかないということなのですね。しかし、いつになったら日本では、学校で「投票の際には、絶対に人の言うことを聞かずに、自分で決めましょう」「投票に行かないのは、賛成票を投じたのと同じこと。反対なら投票しなくてはなりません」と、きちんと教えるんだろう。それをされたら困る政党があるならば、それは民主主義社会には存在してはいけないものではないでしょうか。

それにしても、泉さんと話す前は僕ちょっと暗い気分だったんですが、「世の中変わるで」と聞いて、ちょっと元気が出てきました。確かにそれでいくしかないですわ。また応援に駆け付けますんで、お互い頑張りましょう。

「明石モデル」で子育て世代と高齢者層から圧倒的な支持を受ける泉房穂氏が唯一、氷河期世代から不人気な理由_7
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構成・文=宮内千和子 撮影=石川雅彩

#1「なぜ明石のコミュニティバスが全国でトップレベルに成功しているのか? その答えはサイレントマジョリティの声にあります」泉房穂×藻谷浩介

日本が滅びる前に 明石モデルがひらく国家の未来 (集英社新書)
泉 房穂 
2023年9月15日
1,100円
208ページ
ISBN:978-4087212792
大増税、物価高、公共事業依存、超少子高齢化の放置…
社会の好循環を絶対生まない「政治の病(やまい)」をえぐり出す
泉流ケンカ政治学のエッセンス!

◆内容紹介◆
3期12年にわたり兵庫県明石市長をつとめた著者。「所得制限なしの5つの無料化」など子育て施策の充実を図った結果、明石市は10年連続の人口増、7年連続の地価上昇、8年連続の税収増などを実現した。しかし、日本全体を見渡せばこの間、出生率も人口も減り続け、「失われた30年」といわれる経済事情を背景に賃金も生活水準も上がらず、物価高、大増税の中、疲弊ムードが漂っている。なぜこうなってしまったのか? 
著者が直言する閉塞打破に必要なこと、日本再生の道とは? 市民にやさしい社会を実現するための泉流ケンカ政治学、そのエッセンスが詰まった希望の一冊。
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