今が世の中の変わり目。踏み出せば変わる
藻谷 明石モデルが推進力をもって、各地域に横展開していくのは大いに期待していますが、ちょっと気になるのは、最近の子どもたちって自尊意識が低くて、老けたような悟ったようなことを言う子が多いようにも思うんですよね。
泉 藻谷さんとは同世代だけど、自分たちの子ども時代って、将来の絵を描くときには明るい色を使っていましたよね。今の子どもたちは明るい未来の予想図なんか描かないですからね。選択肢がすごく狭まっているんですよ。
藻谷 自尊意識が低いのは、つまり常に自分を何かの他者と比較しているということです。人間は他と比べなくても、腹減ったところにご飯を食べれば、おいしかった、元気になった、うれしいなと感じるのが本能。いつどこで、そんななに何でも人と比較ばかりする習慣を植え付けられてしまったのか。
だからこそ今、泉さんのような存在が重要なんだと思う。なぜなら、泉さんの政策の根本にあるのは、「みんな同じ人間なんやから、それぞれがハッピーになれるように、邪魔になっているものはどけて助けましょう」という考えで、そこには「人を人と比較してどうのこうの」という発想は入ってない。比較せずとも、人は人として尊いはずだ、ということでしょう。ところが世の中の多くは、「この人は助けていいけど、この人は助けなくていい」と区別して線を引こうとする。線を引き始めれば、必ずいずれはナチズムになってしまうんですが。
泉 実は並行して子ども向けの本も今準備中なんです。でもね、勘のいい子たちはもう気がつき始めていますよ。中高生がやたら私に手紙をくれたり、連絡を取ってくるんですよ。急に政治に目覚める学生も増えている。何かできそうな気がしてくるんでしょうね。あんな貧しい漁師の小せがれの泉さんができたんだから、自分もできるんちゃうかと(笑)。ひいてはそういう子どもたちが変わっていく原動力にもなっていくと思っています。
藻谷 そうですね。ゆがんだ考えを持った人も、歳を取った人から順に死んでいく。今の子どもが変わって行けば、やがては社会も変わるわけです。
泉 今、ちょうど変わり目ちゃうかなと本気で思っています。最初は変わり者の市長さんが変わったことをしとるだけや、あんなことできるわけないと言っていた周りの市長さんが、ばたばたと替わって、この2年ぐらいで、兵庫県内でも、明石市同様の18歳までの子ども医療費無償化導入は、あっという間に広まりました。だから確実に時代のニーズに対して動きが始まっているんですよ。